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[3]資本主義はオリーヴィとともに始まった

「資本主義のこれまでとこれから」(WEBRONZA×朝日カル連携講座)

水野和夫 日本大学国際関係学部教授

貨幣は石ではなく種子

 さて、一般的に言われる「ルネサンス」とは、14~15世紀のイタリアルネサンスを意味しますが、最近の研究ではすでに12世紀にルネサンスが起きていたということです。

 ですから、西ローマ帝国が滅んでから800年後に中世になり、宗教改革のあたり、1630年ぐらいに中世が終わり、といった区分も時代にあわなくなってきたように思います。

 これは次々と新しい事実が発見されているからです。歴史は常に変わっており、新しい事実が発見されるとともに歴史の解釈も変わっていきますので、40年前に習った世界史とは、まったく違う内容になっていると思います。

 1970年代、オリーヴィの発見で中世経済史の見方が一変しました。それからまだ40年しかたっていませんので、また新たな材料が発見されれば歴史は変わってくるでしょう。

 12世紀のルネサンスの特徴は、時間の商品化と知の商品化ということになります。時間の商品化というのは利息をちゃんと認めるということです。

 知の商品化については、商売人の仕事は当然儲けることですから、そのためには情報がないといけません。当時は知識も神様が所有していましたので、彼らは教会に行ってそれを耳で聞きました。

 当時の人たちは、だいたい2%程度の人しかラテン語を読めませんので、98%の人たちは教会で話を聞き、『聖書』にこう書いてあるからこうしなさいと言われ、「ああ、そうなんだ」と理解する。そんな世界でした。

 それから400年ほどたつとマルティン・ルターが登場し、どうも『聖書』に書いてある内容と違うことを教会が言っているという話になります。こうして教会にとっては12世紀以来の大危機が訪れました。教会にとって都合のいい解釈ばかりしていたため、ルターに指摘されて非常に困ってしまったわけです。

 しかし、「時間の商品化」については12世紀の段階で実現されていたわけですから、近代は事実上12世紀から始まっていると言ってもいいぐらいではないでしょうか。

 後ほど述べると言っておきましたが、実は、オリーヴィが打ち出した利息を認める理論で画期的だったのは、貨幣は石ではなくて種子だと言ったことです。

 石だったら今の100万円は来年も100万円ですから利息を取ってはいけません。石は資産価値が増えるわけではないからです。

 しかし、種子であれば、

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筆者

水野和夫

水野和夫(みずの・かずお) 日本大学国際関係学部教授

1953年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。八千代証券(国際証券、三菱証券を経て現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。金融市場調査部長、チーフエコノミスト、執行役員などを経て'10年退社。内閣官房内閣審議官などを経て、現在、日本大学国際関係学部教授。著書に『100年デフレ』『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日本経済新聞社、 のち日経ビジネス人文庫)、『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』(日本経済新聞出版社)、『資本主義という謎』(共著、NHK出版新書)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)など多数。