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突然「ボス」がインド人に

ソフトバンク2・0で起きていること

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

荒業に戸惑う社員

 孫正義社長が突如「ソフトバンク2・0」と言い出し、旧ソフトバンクはソフトバンクグループ(SBG)に社名変更、孫氏の近臣はインド出身のニケシュ・アローラ副社長ら外国人が固めるようになった。そんな会社を作り替えるような荒業にソフトバンク社内から戸惑いが感じられる。

記者会見で談笑する孫正義社長と、後継指名されたニケシュ・アローラ副社長(右)=11月4日、東京証券取引所拡大記者会見で談笑する孫正義社長と、後継指名されたニケシュ・アローラ副社長(右)=11月4日、東京証券取引所

 孫社長の執務室のある本社26階に詰めていたスタッフは今年春、13階にある人事総務部門の部屋に移動するよう申し渡された。このスタッフは同社の中枢部門「社長室」で働くやり手の一人。

 「幹部を全部入れ替える、というんです。こんな決断できるのは、すごい。さすが孫さん。渋谷や六本木あたりの日本のベンチャー経営者には、いないでしょ」。そう驚きつつ、寂しさもある。

 「孫さんのそばにいて、孫さんから千本ノックを浴びる」という、激務だが充実した日々がもう送れなくなることを意味したからだ。「普通の会社の2倍、3倍の仕事を要求されて、大変だけれど、やりがいがありますからね」

 私たち取材に訪れる記者の前では、いつもニコニコしている孫氏だが、社内で見せる顔はまったく違うらしい。「社長へのプレゼンテーションは本当に緊張します。『ちょっと、ここが甘いかな』と思って臨んだら、案の定、甘いところをめざとく見つけた社長から集中攻撃されてボロボロになった」(中堅幹部)。

 かつてソフトバンク常務として孫氏の側近だった北尾吉孝SBIホールディングス社長は「あの集中力はすごい」と孫氏を評する。

 「私もかなり集中力があるし勉強する方だけれど、孫さんのそれは桁違い。海外の先端動向を調べて、係長が担うような細かな技術的なことまで全部掌握するんですよ」。昨年まで側近の社長室長として仕えた嶋聡氏(元民主党衆院議員)も「あれだけの集中力がもし私にあったら……選挙に落ちなかったですよ」と冗談めかして言う。

 そんな類いまれな創業経営者の孫氏と一緒に仕事ができることが、幹部や中枢部門で働く人たちにとっては「仕事の醍醐味(だいごみ)」だった。現社長室長の三輪茂基氏は、「孫さんと一緒に働きたい」と熱望し、孫氏が主宰する人材養成講座「ソフトバンクアカデミア」の門をたたき、ついには三井物産から転職してきた人だ。

孫社長の不在で激変した社内

 この7月以降、それが激変した。

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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