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インフレターゲットを1%に引き下げたらどうか

先進国経済の成熟が進むなか、2%程度のインフレ率を目標とする時代は終わった

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

世界経済の状況が大きく変わり始めた

金融政策決定会合に臨む日銀の黒田総裁(中央)ら=2015年10月30日、日銀本店、代表撮影拡大金融政策決定会合に臨む日銀の黒田総裁(中央)ら=2015年10月30日、日銀本店、代表撮影

 日本銀行は11月19日金融政策決定会合を開き、現在の金融政策を維持することを決めた。国内景気についても、「穏やかな回復を続けている」として、従来のまま見通しを据え置いたのだ。黒田東彦総裁も当日の記者会見で「個人消費や輸出などの需要はかなり増加している」と述べて強気の見方を示した。また、パリの同時テロの経済への影響は「現時点で限定的」と分析、物価上昇率は2%の目標に向けて高まっているとの見解を改めて強調した。

 現在インフレ率は1%前後で推移、2015年のインフレ率をIMFは0.73%と推計している(IMFによる2015年10月時点の推計)。原油価格が2014年末に1バレル100ドルから46ドルまで暴落、その後も40ドル台での推移が続いている。2014年のWTIの年間の平均価格は93.13ドルだったが、2015年には50.51ドルまで下落している(2015年1月~10月の平均価格)。

 この原油価格の下落、そして天然ガス等の関連商品の価格下落がインフレ率を1%前後まで下げている訳だ。原油価格等の下落はアメリカのシェールガス利用の促進等が原因となっていると言われているが、この状況は当面続くと考えられるので、原油等の天然資源価格の下落はしばらくは反転しないと思われている、1970年代のオイルショックと逆の現象で逆オイルショック等と呼ばれている。まさに世界経済の状況が大きく変わり始めたということなのだろう。

天然資源価格の下落のプラスとマイナス

 天然資源価格の下落は一般的に言って、輸入国である多くの先進国にはプラスに働き、輸出国である新興市場国、途上国にはマイナスになる。2015年10月のIMFの世界経済見通しもこれを反映して2015年のアメリカの経済成長率は2.6%、イギリスの成長率は2.5%と先進国経済は好調推移している。

 他方、資源輸出国である新興市場国・途上国はかなりの打撃を受けている。2015年のロシアの成長率はマイナス3.8%・ブラジルの成長率もマイナス3.0%とそのマイナス幅を拡大しているのだ。ただBRICs諸国の中でも中国とインドはそこそこ順調。IMFは2015年の中国の成長率を6.8%、インドの成長率を7.3%と予測している。

 特にインドは好調で、中国との成長率を逆転し、今後とも高度成長を続けると思われる。2014年5月に発足したナレンドラ・モディ政権の改革がかなり成功しているのとインド中央銀行総裁のラグラム・ラジャンのインフレ対策が効をそうした結果でもある。

 また、インドは人口構成が若く(50%以上が25歳以下)、今後とも人口が大きく増加すると見込まれている。現在、人口は12億4千万人で中国より1億人程少ないが、2025年前後には人口で中国逆転し、2050年には17億人弱に達するとの予測だ。中国は一人っ子政策の影響もあり、人口は13億7千万人前後でピークを打ち、その後人口減少、老齢化に転じ2050年には13億人弱になるとの予測だ。

 人口減少の影響もあり、中国の経済成長率は次第に低下し、現在の6~7%から2050年には3~4%まで下がっていくが、インドは人口の増大等を反映して今後とも7%前後の成長率を維持していくと思われる、インドの現在のGDPは中国の1/5、とまだまだ低いレベルにあり、成長のポランシャルは高い。人口3千万人以上の大国のなかでは最も高い成長率を維持し続けるのだろう。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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