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[21]ゴルフは頭で上手くなる(上)

スウィングとショットの因果関係を探る

山口信吾 ゴルフ作家

理屈がわかって体は動く

 ラウンド中に、「歩きに来ているのだからスコアなんて関係ない」と公言する人がいる。しかし、心のうちでは良いスコアで回りたいと思っているはずだ。その証拠に、OBを打ったり池や林やバンカーに打ち込んだりして大叩(たた)きをすれば、不機嫌になり寡黙になる。一方、良いスコアが続けば、上機嫌になり饒舌になる。

 ゴルフの美点のひとつは、コースを相手に自分自身と戦うところにある。ゴルフはどんな腕前でも等しく楽しめるのだ。とはいえ、上達すればするほどゴルフの楽しみは大きくなる。安定して80台で回れる実力を身に付ければ、難しいコースに挑戦したり、バックティーから回ったりできる(バックティーにはハンディ制限がある)。どんなゴルファーと一緒に回っても物おじしなくなる。大叩きをすることが少なくなり、満足いくスコアで回って気分よく家路につくことができる。さらには、上級者同士できびきびした真剣勝負を楽しむことができる。上級者同士の真っ向勝負の楽しさは格別なのだ。

 「時折、良い球を打つことがあるが、ラウンドでは一つひとつのショットがつながらず、100~110をたたくことを繰り返して悩みは深まるばかりだ」という相談をちょくちょく受ける。自他ともに認めるゴルフ好きなのに、なかなか100が切れないゴルファーが多いようだ。練習に励みラウンドもこなしているのに、多くの人が初・中級者の水準を抜け出せないのはなぜだろうか。一番の理由は、「頭を使ってゴルフをしていない」ことに尽きる。

 大人と子供では、上達の道筋がまるで違う。子供は、練習に励むだけで理に適(かな)ったスウィングを覚えることができる。それを証するように、打ち放し練習場で見かけるジュニアゴルファーは、誰もがプロ顔負けの下半身主導のスウィングでボールを真っすぐ遠くへ飛ばしている。手打ちをしているジュニアゴルファーは皆無である。

 ぼくは大学に入学してから空手部に所属し、毎日のように道場の端から端を往復しながら、突きと蹴りを繰り返す基本練習に励んでいた。黒帯の先輩と一緒に並んで、見よう見まねで突きと蹴りを繰り返しているうちに、誰に教わることもなく、キレのある鋭い動きができるようになった。基本練習に明け暮れているうちに、突きや蹴りはますます鋭くなった。

 興味深いことに、大人になってからは、子供のときのように猛練習だけでは正しいスウィングを覚えることができなくなる。思考や判断の中心的な役割を果たしている「前頭葉」が邪魔をするからだ。前頭葉が成長を遂げるのは20代半ばと言われる。大人になってからは、前頭葉を使わなければ正しいスウィングを覚えることはできなくなる。大人は、「このように体を動かせば良いショットが打てる」というスウィングの理屈が胸にストンと落ちてはじめて、体が思い通りに動くのだ。

 ただ、スウィングの理屈を会得するのは簡単ではない。レッスン書やゴルフ雑誌などから得た知識は付け焼き刃にすぎない。ボールを打ちながら様々に試行錯誤し、失敗と成功を繰り返すなかで、自分の体の動きを分析することによってはじめて獲得できる、実体験に基づいたスウィングの理屈が必要なのだ。自分の体と会話しながらボールを打つことが上達の決め手なのである。

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筆者

山口信吾

山口信吾(やまぐち・しんご) ゴルフ作家

1943年、台北市生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、同大学院を修了。69年、竹中工務店に入社。72年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院修了後、米国大手設計事務所に勤務。75年に帰国して竹中工務店に復帰。一貫して都市開発プロジェクトに従事。2004年の定年退職後はゴルフ作家として活動している。43歳でゴルフを始めた遅咲きゴルファー。ベストハンディキャップ8。97年以来、毎年のように英国の海岸地帯の「リンクス」と呼ばれる自然のままのコースを巡る。『定年後はイギリスでリンクスゴルフを愉しもう』(亜紀書房)、『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日経ビジネス人文庫)、『死ぬまでゴルフ!』(幻冬舎)など著書多数。自身のブログはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~single 【2016年3月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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