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電力自由化は望ましいことか

多くの企業が参入して価格が乱高下し、安定供給が阻害される可能性を考えると疑問も

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

778社が電力事業参入を届け出

 2016年4月から法律の改正により家庭などに向けた電力小売りが全面自由化される。すでに東京ガス・ソフトバンク等が電力事業への新規参入を表明している。経済産業省によると2015年10月時点で778社が電力事業参入を届け出ているという。

 一般的に自由化は歓迎されているようだ。料金の引き下げやサービスの改善につながるのではないかという期待がふくらんでいるからだろう。東京ガス等は本来のガスと電気をセット販売し料金引き下げを目指すようだし、JXホールディングスも本業のガソリンとのセット販売を企画しているという。

 たしかに自由化のメリットは一方であるのだろう。しかし、従来公共料金とされてきた電力価格が自由化されることで、価格の変動が大きくなる可能性がある。石油と石炭の価格の変化が電力料金により敏感に反映される可能性があるからだ。従来、電力料金や都市ガス料金は公共料金として政府が認可してきたのだ。そして労働関係調整法では電気ガス等については強制調停と緊急調整さらには抜き打ちストライキの禁止等が設けられている。

 筆者が幼かった頃はしばしば停電などが起こっていたが、近年はそれもほとんどなくなり、電気もガスも安定的に供給されている。しかも電力料金はそれ程高いものではない。30アンペア―の契約で月間の使用量を300キロワットとすると、東京電力への都民の月間の支払いは9000円弱だ。中部電力・関西電力・北陸電力・九州電力等でも月間支払額は7000円から9000円の間になっている。自由化で料金が値下げになるといわれているが、それ程大きな低下にはならないのではないだろうか。

 欧米では2000年前後から電力の自由化が行われているが、必ずしも電力料金は下っていないという。日本で電気料金が低めに抑えられてきたのは近年原子力発電が大きく拡大してきたことが寄与している。しかし東日本大震災の影響で原発が不安定な状況になり、原子力発電が一つ、また一つと停止してきてしまったのだった。若干の再稼働はあるのだろうが、原発が電力供給の一方の柱になることはしばらくのうちは期待できないと思われる。しかし、中長期的に考えれば、安全対策を万全にした上で原子力発電を利用することが電力料金の引き上げを阻止するためには必要になってくるのだろう。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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