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[24]はたしてゴルフはスポーツなのか?(下)

ゴルフは史上最強の遊戯

山口信吾 ゴルフ作家

ゴルフは比類のない生涯スポーツ

 先述した社会生活基本調査によれば、野球とゴルフの2011年(カッコ内は1986年)の15歳以上の行動者率は、それぞれ6.2%(16.9%)、8.3%(11.8%)である。野球の行動者率は25年の間に激減し、今やゴルフを下回っているのだ。

 それぞれの年齢5歳階級別の行動者率を見ると、興味深いことがわかる。1986年には15~19歳の野球の行動者率は32.4%もあった(中高生の3人に1人が野球をしていた)が、2011年には約半分の16.4%に激減している。中高生の野球離れは深刻なのだ。

 さらに、1986年でも2011年でも、25歳を超えると野球の行動者率はどんどん低下し、50歳を超えると2~3%にすぎない。野球をしているのは今も昔も若者だけである。サッカーもテニスも、野球と同様に、若者が主な競技者である。学校を卒業すれば多くの人々がスポーツを楽しむための三つの間(時間、空間、仲間)を失ってしまう。さらには、体力と反射神経が必要な野球やサッカーやテニスは、年をとると続けるのが難しくなるのだ。

公園内のスポーツ広場で練習試合をする地元サッカークラブの中学生拡大公園内のスポーツ広場で練習試合をする地元サッカークラブの中学生

 一方、2011年のゴルフの行動者率を見ると、15~24歳では2.5~5.7%と低い。ところが、25歳を超えてからは、行動者率は跳ね上がり、69歳に至るまで一貫して9~10%である。

 世代を超えたゴルフの高い行動者率を支えているのは、全国津々浦々にあるゴルフコースと練習場である。全国のゴルフコースは減少傾向とはいえ2336カ所を数える。かつて全国各地に5000カ所もあったゴルフ練習場は、減ったとはいえ今でも3360カ所もあり、年間延べ利用者数は9000万人に及ぶ。

 ゴルフが生涯スポーツとなっている大きな理由は、特別な運動能力も体力も不要なことだ。止まっているボールを打つのだから反射神経もいらない。自分のリズムとテンポでクラブを振ればよいのだ。年をとってからの飛距離の低下は、アプローチとパットを磨くことで補うことができる。道具を選べば体力の低下も補える。年の功で自制心が働いて無理なショットを避けるようになり大たたきをしなくなる。ゴルフは死ぬまで楽しめるのだ。

 ゴルフが生涯スポーツとなっているもうひとつの理由は、ゴルフが途方もなく楽しいことにある。年間延べ9000万人もの人がせっせと練習場に通っているのだ。打ち放し練習場に行けば、教え合いながらゴルフ談議を交わしつつボールを打っている中高年をよく見かける。ゴルフは練習でさえ楽しいのである。

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筆者

山口信吾

山口信吾(やまぐち・しんご) ゴルフ作家

1943年、台北市生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、同大学院を修了。69年、竹中工務店に入社。72年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院修了後、米国大手設計事務所に勤務。75年に帰国して竹中工務店に復帰。一貫して都市開発プロジェクトに従事。2004年の定年退職後はゴルフ作家として活動している。43歳でゴルフを始めた遅咲きゴルファー。ベストハンディキャップ8。97年以来、毎年のように英国の海岸地帯の「リンクス」と呼ばれる自然のままのコースを巡る。『定年後はイギリスでリンクスゴルフを愉しもう』(亜紀書房)、『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日経ビジネス人文庫)、『死ぬまでゴルフ!』(幻冬舎)など著書多数。自身のブログはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~single 【2016年3月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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