2016年02月02日
4月に迫った電力自由化に先立ち、昨年11月、電通が全国20歳から69歳までの男女5千名に「エネルギー自由化に関する生活者意識調査」を実施した。それによると、電力自由化の認知度は、「内容まで知っている」が8.9%、「内容は分からないが、自由化されることは確かに知っている」が53.3%で、合わせると62.2%となった。
一方で、電力の購入先の変更意向は、「すぐにでも変更したい」が3.9%、「変更する方向で検討したい」が17.1%で、合わせて21.0%となった。「内容まで知っている」という回答よりも「変更意向」を示した回答比率が高いのは奇異でもあるが、認知度の高まりはあるものの、具体的内容についてはまだ十分な理解が浸透しておらず、さまざまな混乱もあるのが実態だろう。
今回の電力自由化は、正確には、「電力の小売り全面自由化」ということで、家庭や商店など全ての消費者が電気の購入先を自由に選べるようになる、ということだ。
電力小売りには、現時点で130社が新規参入に名乗りをあげている。既にさまざまな料金プランの提示合戦が過熱気味で、価格.comでもお得なプランを探せるようになっているが、そもそもこの動きは電力産業や消費者にいかなる恩恵をもたらすものなのであろうか。
発端は、いうまでもなく東日本大震災での原発災害をきっかけにした国のエネルギー政策の見直しだ。従来、大手電力会社の地域独占を前提に進めてきた電力供給の在り方に、根本的な変革を求める機運が高まった。その結果、発送電分離を骨子とする電力システム改革の推進が決まり、昨年6月、東京電力など大手電力会社に送配電部門の分社化を義務づける改正電気事業法が成立した。実施は2020年4月だ。
同法の成立により、新規参入する企業も大手電力会社と平等の条件で送配電ネットワークを利用できるようになり、消費者は電気を買う相手を自由に選択できるようになる。政府は、一連の電力システム改革を、(1)地域をまたいだ電力融通を円滑に行う、(2)電力小売りの全面自由化、(3)発送電分離の実施と料金規制の撤廃、という3段階で進める予定にしており、4月からは(2)の段階に進むのだ。
原則的に、独占や規制を撤廃したり緩和して自由競争を促進するのは産業の活性化につながり、料金の値下げなど多くの消費者メリットをもたらす。経済原則に基づけば「電力の自由化」は多くの国民に歓迎される施策であることは間違いない。
しかしながら、本件に関しては、安売り競争のような形で商売が先行するイメージに複雑な思いを持つ人達も多いことだろう。
世界を震撼させた福島原発の大規模災害に見舞われながらも、未だに廃炉に向けた作業は遅々として進まず、政府のエネルギー政策は不透明にみえる。一方で、原発再稼働を急ぎ、原発輸出にも熱心な様子に不安や不満を募らせている国民も多いのではないだろうか。
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