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[27]ゴルフは脱お金持ちが必至(上)

名門ゴルフ場といえども苦境にある

山口信吾 ゴルフ作家

名門ゴルフ場の凋落

 兵庫県の山間にある名門ゴルフ場で、マッチプレーを楽しむゴルフ会を2009年から開催してきた。落ち着いた雰囲気で、食事がおいしくて、自然の地形を生かしたコースの手入れも良好なので満足していた。ところが、しばらく前から食事の味が落ちてコースの手入れが悪くなってきた。ティーグラウンドの芝草が伸びたままのことさえあった。2年ほど前に、自社でやっていたコース管理業務を外部業者に委託したのだという。業者に任せきりにすれば、ラウンドしたゴルファーの声がコース管理者に届かなくなる。

 このゴルフ場の会員権価格は、2009年には名門にふさわしい400万円であったが年々下がり続けて、今や60万円である。会員権の価格は、会員数、コースの評価、交通利便性、経営状況などの〝集合知〟として決まる。会員数は適正で、交通利便性も悪くないのだから、コースの評価が下がり経営状況が悪化したのであろう。古いゴルフ場なので数多い高齢会員の売却が止まらないことや、入会費(名義書き換え料)が100万円と高いことも響いているに違いない。

 この名門ゴルフ場のプレー代は、平日でもキャディー付きで1万4400円と高めである。一方、兵庫県の競争環境は厳しい。ゴルフ場1カ所当たりの来場者数で比較すると、大阪府が5万人強であるのに対して兵庫県は3万9千人なのだ。

 さらに、周辺には超名門のゴルフ場が3カ所もある。さらに加えて、昼食付きで平日7~8千円という格安のゴルフ場が周りにたくさんある。超名門と格安のゴルフ場の板挟みになって、ビジター獲得競争に負けているのだ。ビジターを集客できなければ経営が苦しくなり、経費削減を迫られる。かつてあれだけおいしかった料理がまずくなったのは、食材の質を落としたからだろう。コース管理の委託費もけちっているに違いない。

 会員権価格が下がってもゴルフ場にとっては痛くもかゆくもないと思われるかもしれない。しかし、会員権価格が下がれば、高いプレー代をとれなくなる。入会してくる会員の質が下がる心配もある。いっそ安売り路線に走ればビジターを集客する活路は見つかるかもしれないが、名門のプライドがそれを許さない。古くからの既存会員からの反発も大きいだろう。そうはいっても、コースの手入れが悪くなり料理の味が落ちている現状では、高めのプレー代を維持するのは難しくなる。近いうちに名門の旗を降ろさざるを得ないのは目に見えている。

 クラブの活性化を図るためには、少なくとも年数パーセントの会員の新陳代謝が必要である。新旧会員の交代が順調に進まなければ、高齢化した会員の来場が減少し、プレー代を下げてビジターを無理に集めたり、年会費や入会金を値上げしたりすることになる。それでは追いつかなくなって経費削減に走り、コースが荒れたり料理の質が落ちたりして悪評が立ち、さらに客足が落ち込む、という負の連鎖が始まる。

 結局のところ、6年間にわたって月1回通い続けたこの名門ゴルフ場を見限ることにした。昼食付きで平日8千円でプレーできる好ましいゴルフ場を見つけたのだ。

 突然顔を見せなくなった〝リピート客〟の我々に、この名門ゴルフ場からは何の連絡もなかった。黙っていてもお客が来てくれた時代はとっくに終わっているのに、とついつい思ってしまう。

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筆者

山口信吾

山口信吾(やまぐち・しんご) ゴルフ作家

1943年、台北市生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、同大学院を修了。69年、竹中工務店に入社。72年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院修了後、米国大手設計事務所に勤務。75年に帰国して竹中工務店に復帰。一貫して都市開発プロジェクトに従事。2004年の定年退職後はゴルフ作家として活動している。43歳でゴルフを始めた遅咲きゴルファー。ベストハンディキャップ8。97年以来、毎年のように英国の海岸地帯の「リンクス」と呼ばれる自然のままのコースを巡る。『定年後はイギリスでリンクスゴルフを愉しもう』(亜紀書房)、『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日経ビジネス人文庫)、『死ぬまでゴルフ!』(幻冬舎)など著書多数。自身のブログはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~single 【2016年3月WEBRONZA退任】

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