簡素ゴルフのすすめ
2016年03月07日
日本の総人口は、2010年に1億2800万人に達してから減少に転じた。1950年に4.9%であった高齢者率は、1960年には10%、2005年には20%を超え、2015年には26.7%に達した。ある推計によれば、高齢者率は今後とも上昇を続け、第二次ベビーブーム期(1971~74年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、36.1%になると見込まれている。
超名門ゴルフ場といえども経営に苦しんでいるのは、世界経済が金融危機の後遺症に苦しみ大停滞しているのに加えて、人口減と少子高齢化が日本経済をじわじわとむしばみ、さらには、ゴルフ人口が激減してゴルフ市場が大きく縮小しているからだ。日本のゴルフ業界はダブルパンチどころかトリプルパンチをくらっている。
総務省の生活基本調査によれば、1986年から2011年への25年間で、ゴルフ人口は1537万人から924万人へと激減したばかりでなく、下図に見るとおり、若い世代がゴルフ離れをして、ゴルフ人口は高齢化の一途なのである。1986年といえば、ぼくが43歳でゴルフを始めた年だ。このころ、20~30代の若いサラリーマンの5人に1人はゴルフをしていた。かつてゴルフは圧倒的に若い世代が楽しむスポーツだったのだ。
1986年に37~39歳であった「団塊の世代」(1947~49年生まれの約800万人)のゴルフ行動率は、17.3%と高かった。2011年に62~64歳になった団塊の世代のゴルフ行動率は、低下したとはいえ10.6%を保っている。若いときに親しめば、ゴルフは生涯スポーツになるのだ。
1986年に全国に1538カ所あったゴルフ場は、2011年には2413カ所に増えた。25年の間にゴルフ人口が40%も減ったにもかかわらず、ゴルフ場は875カ所も増えているのには驚く。
ゴルフ人口が激減したにもかかわらずゴルフ場の数が激増したのは、バブル経済が崩壊した1990年以降にもゴルフ場が続々と建設されたからだ。1990~93年には毎年100カ所前後のゴルフ場が開場した。新設ゴルフ場の数がゼロになったのは、実にバブル崩壊から15年後の2005年のことだった。
さらに、預託金の返還ができなくて法的整理を受けて身軽になったゴルフ場が新たなスポンサーの下で再出発したからだ。バブル崩壊から2014年までの間に法的整理を受けたゴルフ場は900カ所強に及ぶ。負債総額は実に16兆円を超える。預託金を泣く泣く諦めた会員の犠牲のもとに、多くのゴルフ場が温存されたのだ。
経済が下降線に入りゴルフ需要が減少しているときに供給が大きく増えたのだから、ゴルフ場が過当競争に陥ったのは無理もない。バブル崩壊後も増え続けていた全国のゴルフ場は、2003年に初めて減少に転じた。それでも、2009年まではわずかに減っただけである。
団塊の世代が退職してゴルフ場にせっせと通って売り上げに貢献したからだ。その証拠に、延べ利用者数がピークの1億人に達した1992年には1000億円を超えていたゴルフ場利用税額は年々落ち続け、2014年には半分以下の478億円になった。22年間で延ゴルフ場利用者数は15%減っただけなのに、利用税収入は実に53.8%減少した。コース来場者に占める70歳超の非課税者の割合が年々増えているのだ。
定年退職した高齢者がラウンド数を増やして下支えしているにもかかわらず、経営破綻するゴルフ場は2011年ごろから相次ぎ、全国のゴルフ場数は、2010年に13カ所減となり、それ以降毎年のように二桁減となり、ついに2014年には50カ所の大幅減となった。
預託金返還請求による法的整理というゴルフ場倒産劇の第1幕が終わりつつある今、経営不振による廃業という第2幕が開いているようである。毎年の赤字を内部留保の切り崩しや借入金で補てんしながら何とか経営を保ってきたが、債務超過となって倒産し、廃業したり用途転換したりするゴルフ場がじわじわと増えているのだ。2014年末までに太陽光発電所に転用されたゴルフ場は59カ所にのぼる。用地転換もままならず放置されるコースも少なくない。いよいよゴルフ場の淘汰が始まったのだ。
団塊の世代が全員70歳代になるのは、2019年である。70代になればゴルフの参加率は急激に落ちる。現在、料金が安い平日には、団塊の世代で賑わっているゴルフ場や打ち放し練習場だが、5年もすれば閑古鳥が鳴いている可能性がある。
過当競争に明け暮れているだけでは、ゴルフ場は需要に見合った数に減るしかない。交通利便性やゴルフ場の過密度などの観点から調査した結果、2035年までに日本全体で1000カ所のゴルフ場が立ち行かなくなるとの厳しい見方がある(齊藤修著『余剰ゴルフ場』)。しかし、現在2300カ所を超える日本のゴルフ場は、生涯スポーツの場であるだけでなく、地域の雇用や地方税を生み出している貴重な社会資本である。全国津々浦々にあるゴルフ場の数を減らしてはならない。
今後のゴルフ市場を取り巻く環境の変化に個々のゴルフ場はどのように適応すればよいのだろうか。
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