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「逆オイルショック」の衝撃

短期的に好調を維持してきた先進国にも次第にその影響が及んでいる

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

オイルマネーが世界を席巻した時代

 1970年代、石油価格が2度にわたって引き上げられ、エネルギー源を中東の石油に依存してきた先進工業国の経済を脅かした。1973年から74年にかけて原油価格は1バーレル3.01米ドルから11.65米ドルへ、そして1979年にはさらに15%近く引き上げられたのだった。

 日本の消費者物価は1974年には23%上昇し、1956年度から73年度まで続いた高度成長(年平均で9.1%)は終焉したのだった。1974年には戦後初めてのマイナス成長(マイナス1.2%)を継続し、1979年には成長率は2.6%まで下落した。

 この結果、日本経済は高度成長から安定成長に移行し、1974年度から90年度までの平均成長率は4.2%にまで下がったのだった。逆に、石油価格の上昇はサウジアラビア・クウェート等のOPEC諸国を豊かにし、いわゆるオイルマネーが世界を席巻したのだった。

天然資源価格の急落が資源輸出国を直撃

 ここ1~2年起こっていることはまさにその逆。原油価格は2014年7月の1バーレル100米ドル前後から2016年2月には30米ドル前後まで下落したのだった(2014年の年平均WTI価格は1バーレル93.13米ドル、2015年は48.75米ドル、2016年2月には30米ドル前後で推移)。

 石油だけではなく鉄鉱石価格等他の天然資源価格も大きく下落している。2014年の年平均の鉄鉱石価格は1トン96.84米ドルだったが、2015年には年平均で1トン55.21米ドルへ、そして2016年に入って40米ドル前後まで下ってきている。

 天然資源価格の急落は資源輸出国を直撃し、2015年ロシアの成長率はマイナス3.7%、ブラジルはマイナス3.8%と急落したのだった(2016年1月のIMFによる推計)。全体としての新興市場及び途上国の成長率は2014年の4.6%から4.0%へ下落するとの推定だ。

 資源価格の下落は資源輸入国には少なくとも短期的にはプラスになる。2015年のアメリカの成長率は2.5%、ユーロ圏は1.5%とそれぞれ2014年から0.1%、0.6%上昇している。日本も2014年は消費税増税の影響で成長率は0.0%だったが2015年には0.6%まで回復すると推計されている。

予断を許さない状況

FRBのイエレン議長拡大FRBのイエレン議長

 FRBのジャネット・イエレン議長は好調なアメリカ経済を背景に2015年12月利上げを実行したが(公定歩合0.75%→1.00%)、2016年に議長の発言通り利上げを続けられるかどうかは予断を許さない状況となってきている。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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