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マイナス金利とゼロ成長の時代

多くの先進国は「豊かなゼロ成長」の時代に入ってきた

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

低金利時代に入った先進国

衆院財務金融委で答弁する黒田東彦日銀総裁(右)。左は麻生太郎財務相拡大衆院財務金融委で答弁する黒田東彦日銀総裁(右)。左は麻生太郎財務相

 日本銀行は2016年2月16日、マイナス金利を導入した。欧州中央銀行(ECB)、スイス、デンマーク、スウェーデンが現在では日本とともにマイナス金利を導入している。日銀のこの決定を受け、新発10年国債の金利もマイナスになり、3月下旬にはマイナス0.1前後で推移している。5年債の金利はマイナス0.2%前後。3カ月割引国債の金利もマイナスになっている。

 黒田東彦日本銀行総裁は、マイナス金利は金利低下を進め「株高・円安の方向に力を持っている」との見解を示し、必要ならさらなる金利引き下げを辞さないとしている。しかし、マーケットの反応は日銀の期待通りには動いていない。

 円ドル相場は円高に推移し、1ドル115~120円のレンジから110~115円のレンジに変わってきている。日経平均も1万6千円後半で大きく変化していない。

 ただ、若干の下止まり感は出てきたといえるのだろう。アメリカの10年債の利回りも1月中旬から2%を切って1.8~1.9%のレンジに入ってきている。ドイツの10年債金利も下落し、年初の0.6%弱から0.2%弱まで下ってきている。アメリカもドイツも10年債はマイナス金利にはなっていないもののこのところ大きく下落しているのだ。

 先進国では軒並み金利が低下し、低金利時代に入ってきているのだ。

 日本の10年国債の金利が2%を切ったのは1997年9月、それから20年弱、ここ10年は金利は下がり続けている。2006年始めには1.7~1.8%だったが、2016年にはマイナスレンジに突入している。アメリカの10年債の利回りも2007年には4%を上回っていたがこの10年、トレンドとして下落し続け、2016年1月には2%を切り、3月には1.8%まで下っている。ドイツ国債も同様。2007年には4%前後だったが、下落し続け、2015年に入ると1%を切り、2016年3月には0.2%まで下落している。

「利子率革命」

 水野和夫はこれを「利子率革命」と呼び、資本主義が終焉したのだと述べている(水野和夫著、「資本主義の終焉と歴史の危機」、集英社新書、2014年)。利子率の低下は背景に利潤率の低下を持っている。つまり、投資があらゆるフロンティアに行きわたり、もはや、高い収益を得ることが不可能になってしまったというのだ。

 この現象は中世が終焉した長い16世紀(1450~1640年)にも起っていたという。農業生産が山の上までいきわたり、それ以上生産性を高めることが不可能になって世界経済は長期停滞の局面に入っていったのだ。そして、この停滞は産業革命の時期まで続いたのだった。

 水野は「長い21世紀」でも投資が世界的にいきわたり、低金利・低利潤率に至っているという。「より遠くに、より速く、より合理的」に展開してきた資本主義はついにそこそこの収益が見込める投資先を失い、「より近く、よりゆっくり」進まざるをえなくなってきたというのだ。つまり、日本を含む先進国は「ゼロ成長」の時代に入ってきたという訳だ。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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