事業化に係る規制全体を洗い出し、一括して見直しできる仕組み導入を
2016年04月26日
国家戦略特区(以下、特区)は、アベノミクス第1弾の3本目の矢「成長戦略」の中核をなす政策である。具体的には「区域を限って規制緩和その他の支援措置を行い、経済成長を促す」取り組みであり、2014年の制度発足から2015年度末までは、とくに「集中改革期間」とされてきた。同期間の終了を機に特区の活動を振り返り、今後に向けた課題を整理する。
この背景には、社会的要請の変化がある。2013年12月に国家戦略特区法が成立した当時、日本経済の国際競争力への懸念が高まっていたことから、「内外からの民間投資を促して雇用創出や消費拡大につなげる」ことが政策目標とされた。しかし、こうした大都市の成長を促し、わが国経済を牽引する方針に対し、「大都市偏重」との批判が寄せられたため、その後、成長の恩恵を地方にも及ぼすというローカル・アベノミクスの観点が強調されるようになった。
このように特区のコンセプトには多少の変遷があるものの、手法としては一貫して規制緩和重視である。具体的には、医療や農業、労働など長らく改革を拒んできた「岩盤規制」の見直しや、遠隔教育や自動走行・飛行といった近未来技術の実証が進められている。
図表は2016年3月末現在の各区域の活動状況である。東京、関西、愛知とわが国の主要ビジネス拠点が網羅される一方で、兵庫県養父市や秋田県仙北市など一次産業中心の地方都市も含まれる。これら地方都市は人口減少や高齢化、産業の衰退に直面するなかで、特区に打開策を求め、一次産業の生産性向上と食品加工、観光など周辺分野への展開、遠隔医療、ドローンを使った買い物難民対策などに取り組んでいる。一方、大都市圏の特徴ある事業としては、グローバルな都市間競争に向けた大規模再開発、先端医療や民泊等がある。
1次指定6区域の事業を評価した内閣府資料(注1) によると、ほとんどの特区で、規制緩和したものの実際には活用されていない事業が存在するなど十分な成果が得られているとは言い難い。要因として、以下の3点が指摘できる。
(注1)「平成27年度国家戦略特別区域の評価について(案)」国家戦略特別区域会議資料(2016年3月24日)。なお、2次、3次指定の特区については指定から1年が経過していないため本年の評価は未実施。
【不十分な規制緩和】
岩盤規制改革に着手したことは画期的であるが、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください