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「潜在的」財政危機を考える

現在の財政赤字状況を放置すれば、財政危機が国債市場の混乱という形で顕在化する

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

突出している日本の累積赤字

 日本の累積財政赤字は2015年にはGDPの240%に達している。先進国の中で最も高い数字だ。2015年アメリカは110%、イギリスは98%、ドイツは76%と日本の数字は突出して高い。イタリアでは149%、債務問題で危機的状況に陥ったギリシャでさえ177%だ。

閣議を前に麻生太郎財務相(右)と話す安倍晋三首相=5日、首相官邸拡大閣議を前に麻生太郎財務相(右)と話す安倍晋三首相=5日、首相官邸

 これだけ高い累積赤字があるのに危機が顕在化しないのは、家計の金融資産残高がGDPの340%と大きく債務残高を上回っているからだ。

 多くの家計は金融資産を銀行預金・郵便貯金・保険等の形で保有しているが、預けられた金融機関は大量の国債を保有している。その結果、日本の国債の9割以上は日本人によって保有されている。

 また、日本国債の4~5%は各国の外貨準備として持たれている。2015年の日本政府の総債務残高は1238兆550億円(IMFによる2016年4月時点の推計)、これに対して家計の金融資産残高は2015年3月末まで1708兆円に達している。

貯蓄率低下の最大の原因

 今のところ家計の金融資産残高は国の債務残高を400兆円弱上回っているが、この額は次第に減少していくと考えられる。というのは、政府は毎年GDPの6%から10%の赤字を出しているが、家計の貯蓄率は次第に減少し、2013年度にはマイナス1.3%まで低下している。2014年度には0.1%まで戻しているものの、ほぼゼロという状況が続いている。

 この貯蓄率は先進諸国の中で最も低い数字だ。2014年ベースでフランス15.0%、ドイツ9.0%、アメリカ5.0%、イタリア4.0%、韓国7.0%といずれも日本より高い。

 日本の貯蓄率は1995年には9.6%とドイツ並みだったが、2000年代に入って急速に低下し(2000年度に6.3%、2005年度に0.9、2010年度に2.5%)、ついに2013年度にはマイナスになってしまったのだ。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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