日本型サラリーマン経営の限界を感じる光景
2016年05月11日
先月の話になるが、東芝、富士通、VAIO三社のパソコン事業統合の話し合いが白紙に戻る見通しとなったことが報道された。統合後の成長戦略や生産拠点の統廃合などについて、合意のめどが立たなかったことが理由という。その後、特に新たな動きは表面化していないようだ。
そもそも、パソコン市場の縮小は今に始まったことではない。
世界市場では、2011年の3億6千万台規模をピークに、昨年は2億8千万台程度にまで落ち込んだ。国内市場でも、数年前まで年間1500万台規模だったものが、昨年は1000万台程度にまで縮小している。
そのような中、パソコンビジネスの基盤を創り上げ、世界一のシェアを誇っていた米IBMの決断は早かった。コモディティー化が進み収益性が悪化したパソコン事業を見限り、既に2005年に中国レノボ・グループに完全売却している。日本でも、PC98シリーズを誇った名門NECは2011年にやはりレノボと合弁会社を作り、そちらに事業を移管した。
今回の三社統合の構想に、「大義」はあったのだろうか。
この構想は、昨年不正会計が発覚し、巨額の損失を計上するに至った東芝の事業整理がきっかけとなっている。同社は既に医療機器部門や白物家電部門の売却を決めているが、かつてダイナブックで世界を席巻したパソコン事業は不採算部門の代表格として不正の舞台にもなった。構造改革を急ぐ東芝が、富士通や、VAIOの実質的オーナーであるファンドの日本産業パートナーズに交渉を持ち掛けた。
古くはパソコン御三家と呼ばれ、NECや東芝と並んで、早い時期から日本のパソコン市場を牽引した富士通も、パソコン事業は非中核事業との位置付けで、今年の2月に分社化を行っている。
今回の三社統合が、単にお荷物となった事業を統合して部品の調達費用を削減するなどで競争力を高めよう、という程度の発想だったとすれば、仮に事業統合が成立したとしても、「コモディティー化した事業にしがみつく」という構図は何ら変わることはなく成功はおぼつかない。規模のメリットでみても、三社統合したところで1500万台程度だ。世界シェア上位三社では、レノボが約6000万台、ヒューレット・パッカードが約5700万台、デルが約4200万台だ(いずれも2014年)。
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