日本はいずれ20%への引き挙げを視野に入れざるをえない状態だ
2016年07月05日
安倍晋三総理は5月31日、消費税の10%の増税を2019年10月まで再延期する決定を下した。30日夜、増税延期に反対する麻生太郎財務大臣と都内ホテルで3時間会談し、最終的には麻生大臣も納得した形だ。何故今増税延期なのか理解に苦しむが、おそらく7月10日の参議院選挙をにらんでの決定だろう。
現在日本の政府総債務残高のGDP比は248.06%(2015年、IMFによる2016年4月時点での推計)、世界一高い数字だ。ちなみに2番目はギリシャの178.40%、イタリアは132.60%(4番目)、アメリカは105.83%(12番目)、フランスは96.79%、イギリスは89.30%、ドイツは71.00%だ(いずれも2015年の数字)。
これだけ政府債務が多いのに国債市場が順調に推移しているのは、日本の家計の金融資産残高が多く、それが間接的に国債購入にまわっているから。2015年末で日本の家計の金融資産残高は1741兆円、GDP比で348.90%だ。
日本の国債の9割以上は日本人によって保有されており、国債に対する需要は強く、10年国債の利回りは2016年6月中旬でマイナス0.171%だ。ちなみにアメリカの10年債の利回りは1.60%、ドイツの10年債の利回りは0.024%だ。
現状では家計の金融資産残高と政府の総債務の間にはGDP比で100%の差が存在しているが、この差は次第に縮小していく傾向にある。
というのは、日本の財政赤字は2006~2015年の平均でGDP比6.80%、2016年も4.85%の赤字が予測されている(2016年4月のIMFよる推計)。他方、日本の家計の貯蓄率は1990年には12%を超えていたが次第に減少し、2013年度にはマイナス1.3%にまで下落している。2014年に若干戻しているものの貯蓄率はゼロの近傍。今後ともゼロ貯蓄率の時代が続くだろう。
財政赤字は年6%前後で推移し、貯蓄率はゼロが続くとなれば次第に政府債務と家計の金融資産残高の差は縮小することになる。このままの状況が続けば15~6年で両者は逆転することになる。
となれば、国債市場の混乱は避けられない。10年前後以内にこの状態を改善しなければならないということなのだろう。
赤字の解消の方法は二つ。歳出を削減するか、歳入を増加するかだ。
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