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消費税増税延期の愚挙

日本はいずれ20%への引き挙げを視野に入れざるをえない状態だ

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

世界一高い日本の数字

安倍首相の記者会見を伝えるニュースが該当の大型ビジョンに映し出された=6月1日拡大安倍首相の記者会見を伝えるニュースが該当の大型ビジョンに映し出された=6月1日

 安倍晋三総理は5月31日、消費税の10%の増税を2019年10月まで再延期する決定を下した。30日夜、増税延期に反対する麻生太郎財務大臣と都内ホテルで3時間会談し、最終的には麻生大臣も納得した形だ。何故今増税延期なのか理解に苦しむが、おそらく7月10日の参議院選挙をにらんでの決定だろう。

 現在日本の政府総債務残高のGDP比は248.06%(2015年、IMFによる2016年4月時点での推計)、世界一高い数字だ。ちなみに2番目はギリシャの178.40%、イタリアは132.60%(4番目)、アメリカは105.83%(12番目)、フランスは96.79%、イギリスは89.30%、ドイツは71.00%だ(いずれも2015年の数字)。

 これだけ政府債務が多いのに国債市場が順調に推移しているのは、日本の家計の金融資産残高が多く、それが間接的に国債購入にまわっているから。2015年末で日本の家計の金融資産残高は1741兆円、GDP比で348.90%だ。

 日本の国債の9割以上は日本人によって保有されており、国債に対する需要は強く、10年国債の利回りは2016年6月中旬でマイナス0.171%だ。ちなみにアメリカの10年債の利回りは1.60%、ドイツの10年債の利回りは0.024%だ。

国債市場の混乱は不可避に

 現状では家計の金融資産残高と政府の総債務の間にはGDP比で100%の差が存在しているが、この差は次第に縮小していく傾向にある。

 というのは、日本の財政赤字は2006~2015年の平均でGDP比6.80%、2016年も4.85%の赤字が予測されている(2016年4月のIMFよる推計)。他方、日本の家計の貯蓄率は1990年には12%を超えていたが次第に減少し、2013年度にはマイナス1.3%にまで下落している。2014年に若干戻しているものの貯蓄率はゼロの近傍。今後ともゼロ貯蓄率の時代が続くだろう。

 財政赤字は年6%前後で推移し、貯蓄率はゼロが続くとなれば次第に政府債務と家計の金融資産残高の差は縮小することになる。このままの状況が続けば15~6年で両者は逆転することになる。

 となれば、国債市場の混乱は避けられない。10年前後以内にこの状態を改善しなければならないということなのだろう。

財政赤字の削減は歳入の増加しかない

 赤字の解消の方法は二つ。歳出を削減するか、歳入を増加するかだ。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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