打開策を語らない黒田日銀総裁 「ヘリマネ」をめぐる疑心暗鬼は今後深まるだろう
2016年07月26日
1200兆円にまで膨れ上がった政府債務をどう処理するか、この難問の解決法としてヘリコプターマネー(ヘリマネ)を押す声が出ている。
ヘリマネとは、政府が紙幣を増刷し、ヘリコプターからばら撒くように市中に供給し、景気を刺激することを言う。
やり方次第で政府債務を減らすことができるが、超インフレや円暴落など弊害も大きい。本稿ではその功罪を考えてみたい。
7月半ば、「ヘリコプター・ベン」の異名を取るベン・バーナンキ前連邦準備理事会(FRB)議長が来日し、安倍首相や黒田日銀総裁と会談したことが、臆測を呼んでいる。政府は「ヘリマネの話は出なかった」と否定しているが、同氏はFRB議長になる前、ヘリマネ論者として発言してきた人物で、日本にも信奉者がいる。話題にならない方がおかしい。
日銀は3年前から本格的な金融緩和を始めた。市場から国債を毎年80兆円ずつ購入し、その代金を市場に供給してきた。
保有する国債は現在約300兆円に達している(上のグラフ)。もしデフレ脱却に成功したら、日銀はその国債を徐々に市場に売り戻し、それまで供給した資金を回収する。これが「出口戦略」である。
ところが、3年たっても消費は不振で設備投資も減少し、景気失速の懸念すら出ている。デフレ脱却のメドが立たないまま、政府債務が増え続けている。いくら日銀が取り繕っても「出口戦略」は実現不能な「虚構」であることが分かってきた。
そこで浮上してきた窮余の策がヘリマネである。
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