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承認が困難視されるTPP

オバマ大統領とクリントン前国務長官拡大オバマ大統領とクリントン前国務長官

 環太平洋経済連携協定(TPP)のアメリカ議会承認が相当困難な状況となってきた。アジアを訪問したオバマ大統領は議会承認について楽観的な見通しを述べたが、アメリカでこれを額面通りに受け取る人はほとんどいない。

 今回の大統領選挙ほど通商問題が問題にされた選挙はない。1年ほど前まではアメリカ人のほとんどがTPPという言葉自体を知らなかったのに、今では誰もが知っている。

 TPPにバッテンを付けたプラカードが民主党大会で踊った。外国の不正な貿易によってアメリカの職が奪われているという主張が、トランプやサンダースによって強硬に行われ、国務長官時代は熱心にTPPを推進していたはずのクリントンも「今も、選挙後も、大統領になってからも、TPPに反対する」と言明するようになった。

 トランプ、クリントンのどちらが大統領になっても、大統領がTPP協定の承認を求めて同協定と関連法案を議会に送付することは考えられない。

レイムダック・セッションも容易ではない

 したがって、大統領選挙が終わって次の大統領や議員が職に就くまでの間のレイムダック・セッションの限られた期間にオバマ大統領が議会承認を獲得するしかない。しかし、これも容易ではない。

 上院の院内総務のマッコウネルは、たばこ規制がISDS条項(投資家が投資先の国を国際仲裁裁判所に訴えられるという規定)の対象から外されたこと、TPP協定承認を担当する上院財政委員会のハッチ委員長は、医薬品業界の新薬のデータ保護期間がアメリカ法が定める12年ではなく8年となったこと、下院議長のライアンは、これらの問題に加えて出身州のウィスコンシンの酪農業界の市場が十分に開かれなかったことを不満としている。

 これら議会承認のカギを握っている有力共和党議員はTPPの再交渉を求めている。

 ライアンはTPP協定承認に十分な票数が獲得できないとしてレイムダック・セッション中の採決には応じないと宣言している。レイムダック・セッションは選挙で敗れた元議員もいるので、賛成票が集まりやすいと思われるかもしれない。

 しかし、そもそも大統領に通商権限を与えた2015年のTPA法案は賛成218、反対208という際どい表決だった。5人が反対に回ると賛否同数になってしまう。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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