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ロボットと人間の最適な共存方法を見いだそう

人間は技術の力で自らの限界を超えていく

小川和也 グランドデザイン株式会社 代表取締役社長

 先端技術を象徴する「ロボット」という言葉が初めて使われたのは、実は100年近くも前のことだ。1920年にカレル・チャペックによって発表された戯曲『ロボット』がそれで、チェコ語で「労働」を意味する“robota”が語源である。

介護施設でお年寄りの話し相手になるロボット「ソータ」。じゃんけんもできる=東京都千代田区
 その語源の通り、ロボットは労働力としての進化を続けた。誕生からおよそ100年を経たいま、ロボットは人間の労働補完道具に収まろうとしていない。

 その背景には、ロボットにも内包される人工知能の高度化がある。人工知能が人間の能力を超えるか超えないかの議論もいまだに多いが、もはや一定の能力においては超えることを前提とした社会づくりをした方が建設的だ。

人工知能が超人的な頭脳を持つことは時間の問題

 例えばIQ。平均的な日本人のIQが100位、天才と称された理論物理学者アインシュタインは100台半ばから200の間であったと推察されている。しかしあと30年もすれば、人工知能のそれは1万程度になるという説もある。その時期や数値的な予測が多少ブレたとしても、人工知能が超人的な頭脳を持つことは時間の問題と考えるのが妥当だ。

 目先の現象がその一端を物語る。1997年にスーパーコンピュータ「Deep Blue」が当時のチェス世界王者に勝利して以降、クイズ、オセロ、ポーカー、将棋と、頭脳ゲームにおいてコンピュータが人間のトッププレイヤーを打ち負かしてきた。一方、囲碁の対局パターンは10の360乗以上になることもあり、さすがのコンピュータでも難攻不落とされていた。ところが今年の1月、Googleの人工知能部門であるGoogle DeepMindが「AlphaGo」というプログラムを開発し、欧州王者であるファン・フイ氏との5回の対局で全勝したことが明かされた。

 対局をしながらそれをデータとして蓄積し、人工知能が自ら学習し、能力が強化されていく。予めインプットされた3000万にも及ぶ指し手を基礎とし、人工知能が自ら成長する。「人間に勝つにはあと10年はかかるだろう」という囲碁の世界の定説をあっさりと覆してしまったことが成長力の証だ。その延長線上に、人間の予想を超えた未来が待ち受けている。技術の進化の積み重ねは、足し算ではなく自乗的に変化のスピードを加速させるのだ。

 2年前に上梓した『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)の中に「人間の仕事の多くが消滅する」という一節がある。ロボットや人工知能の進化によって“人間のどのような仕事が奪われることになるか”について言及したのだが、随分と大きな反響があった。以降世の中の注目テーマとなり、

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