成熟という観点から見れば、成長率が大きく低下した日本は世界のトップランナーだ
2016年10月17日
ハーバード大学教授ローレンス・サマーズ(元財務長官)は2016年2月の「Foreign Affairs」で、「中長期的景気停滞の時代―どう対処すればいいのか」(The Age of Secular Stagnation: What It Is and What to Do About It)を発表し、かねての主張である中長期停滞論を論文の形で示したのだった。
サマーズ教授は、2009年のリーマン・ショック後の景気回復が弱々しいもので、実質金利がマイナス領域で推移したにもかかわらず、「先進国がリーマン・ショック前の状態に戻ることは容易ではないと」主張し、投資需要の不足・低い成長率と所得の伸び悩み、ディスインフレないしデフレが今後とも続いていくと、長期停滞の可能性を示唆したのだ。
たしかに先進国の成長率は1980年代・90年代に比べると大きく下がってきている。
アメリカのここ6年(2010~15年)の年平均成長率は2.12%だが、1980年代(1980~89年)の年平均成長率は3.14%、1990年代(1990~99年)のそれは3.24%だった。
日本の場合、ここ6年の成長率の年平均は0.78%、1980年代は4.41%、1990年代のそれは1.47%だった。ヨーロッパ諸国でも状況はほぼ同様、経済成長率は1980年代・90年代に比べると大きく下がってきている。
サマーズはこれをSecular Stagnationと呼ぶのだが、別の見方をすれば、経済の成熟(maturity)だと考えることもできる。
多くの先進国の1人当たりGDPはすでに4万USドル、5万USドルのレベルに達している。2015年にはアメリカの1人当たりGDPは5万5805USドル、イギリスは4万3751USドル、ドイツは4万997USドル、フランスは3万7675USドルだ。日本は、2015年は円安の影響もあって3万2486USドルだが、日本円では実質で400万円を超えている(2015年416.5万円、2014年413.9万円、2006年に400万円を超し、その後2009年・2011年以外は400万円台を維持している)。
資本主義経済が成熟し、「豊かなゼロ成長の時代」に入ったということなのだろう。
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