「配偶者控除」の見直しと「共働き社会」の実現
2016年12月21日
政府は、「一億総活躍社会」の実現に向けて、「名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を目標に掲げている。すべての人が活躍できる社会が成長と分配の好循環を生み出し、50年後に人口1億人を維持することにつながるからだという。そこには日本が直面する人口減少に対する強い危機感がある。
そのため労働力人口の確保が喫緊の課題となる。しかし、日本の人口ピラミッドをみると、今後の人口増加が期待できないのは明らかだ。従って、女性の就労促進は不可欠だが、仕事と子育ての両立が難しい状況下では、出産を機に離職する女性や出産による機会損失を恐れて結婚自体を躊躇(ちゅうちょ)する人もいる。また、日本では高等教育における私的負担など子育て費用が高いことから、望む数の子どもを産み・育てることを諦めている夫婦も多い。
出生数を増やすための一つの方策は、新たな「共働き社会」を創造することだ。日本の高度経済成長期の「働く夫+専業主婦」という男性片働きモデルの時代は終えんした。世帯収入の多寡に関わらず、妻が就労することで夫の家計負担を、夫が主体的に家事を担うことで妻の家事負担を軽減する、「夫と妻」双方の仕事と子育てが両立した「共働き社会」である。今日の少子化を止める有効な手段は、男女の意識改革と協働による「共働き社会」をつくることであり、仕事と子育てを共に担うための「男と女の活躍推進」が不可欠ではないだろうか。
配偶者控除ができた1961年当時は、大多数が専業主婦世帯だった。その背景には工業化に伴う雇用労働の増加と職住分離があり、家事・育児などの無償労働を主に女性が担う性別分業による近代家族の主流化があった。共働き世帯数は1990年代半ばから専業主婦世帯数を上回り、2015年には1,114万世帯と専業主婦世帯の1.6倍にのぼっている。
近年、税制改革の論議で俎上によくあがるのが「配偶者控除」の見直しだ。政府は本格的な人口減少時代の労働力を確保するために、女性の就労を後押ししている。しかし、パートやアルバイトなどで働く女性が、配偶者控除の「103万円の壁」という年収要件があるために、就労時間を自己抑制しているケースが多くあることから、見直しが検討されているのだ。
2017年度の税制改正に向けては、配偶者控除の全面廃止、共働き世帯にも適用する「夫婦控除」の新設、パート主婦世帯の減税枠の拡大などが検討された。その結果、
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