真珠湾訪問は「敵だった両国が密接な同盟国になったことを証明する」とローズは言った
2016年12月24日
安倍晋三首相とバラク・オバマ米大統領が27日、真珠湾を訪れる。1941年12月の真珠湾攻撃の75年後に実現する歴史的な訪問の背後にいるのは、オバマの側近中の側近であるベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障担当) Ben Rhodes, Deputy National Security Adviser for Strategic Communications and Speechwriting。オバマ大統領を8年間、中枢で支え続け、今でも39歳という若いブレーンだ。
ローズは、米ホワイトハウスで米主要メディアの記者らが構成するインナーサークルのなかで、外交政策を動かす最重要人物として知られる存在だ。米メディアの記者たちは、ローズの話を聞こうと奔走するが、主要メディアであってもローズをインタビューできる機会はまれだ。
ニューヨーク・タイムズは彼を「オバマ外交のグル(導師)」と呼び、ローズについての長編の特集記事(The Aspiring Novelist Who Became Obama's Foreign-Policy Guru 野心的な小説家が、オバマ大統領の外交政策のグルになった)を今年5月の週末版「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に掲載。米政界と米メディアを揺るがす反響を巻き起こした。その記事の最後で、筆者は、オバマ政権のローズを、ニクソン政権のヘンリー・キッシンジャー国務長官になぞらえるほどだ。
(この記事の翻訳は、クーリエ・ジャポンが提供している)
https://courrier.jp/news/archives/52601/
http://courrier.jp/news/archives/52650/
ローズは、大統領と1日2~3時間は過ごすと言われる。外交政策を作り上げ、最重要スピーチをオバマ大統領と二人三脚でつくる。今年5月のオバマ大統領の広島訪問の際、平和記念公園での歴史的な演説をスピーチライターとして書いたのも、この8年間、オバマ政権の東アジア政策を書いてきたのもローズだ。
ローズは、オバマ大統領が各国首脳と行う首脳会談では常にその横に寄り添う。私は2009年から12年まで米首都ワシントンで特派員として勤務し、ホワイトハウスを回るうちにローズとの知己を得た。ホワイトハウスのインナーサークルに、米主要メディア記者に交じって、唯一の外国人記者として加わるようになるようになる中で、ローズとやりとりする機会が増えていった。
ローズは、元々は小説家志望で、実際、作家としての将来を嘱望される才能の持ち主だった。ニューヨーク大院生だった2001年9月の米同時多発テロで、ワールド・トレード・センタービルに航空機が突っ込むのを目撃したことが、彼の人生を変え、国際政治の世界に身を投じる契機になった。
ホワイトハウスの高官たちは彼を、「言葉の天才」と呼ぶ。
広島演説を含め、オバマ大統領が行う重要な演説の多くは、大統領がコンセプトを語り、ローズがそれを言葉としてつむぎ出し、その後2人で細かい点を含めてじっくり練り上げていって完成したものだ。
当初はスピーチライターだったローズは、その明晰さと戦略性が買われて、次第に外交政策そのものを設計するようになっていった。オバマ大統領が、キューバとの歴史的な国交回復で合意に至る極秘の交渉を、特使としてローズに任せたのはその証左だ。
身長は170センチそこそこで米国人としては小柄なローズだが、話し始めると、その声は自信に満ちている。時に大胆なコメントを的確に発し、一方で、答えないと決めると、あたかも答えたかのように言葉をつなぎながら記者を煙に巻く技術にもたけている。
インナーサークルの記者の間では、事の本質や特別なニュースを追う際には、「ローズに聞くに限る」というのが鉄則になっていた。
上記のニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事はローズの怜悧(れいり)で戦略的な側面にばかり焦点を当てているように私には思えた。ふだんの本人は、強烈な自信家という側面の一方で、30代の若者らしい気さくで率直な面もあり、時に書生のような理想論を正面から語る点が非常に印象的で、私はオバマ外交の理想主義をそのまま体現しているように感じていた。
昨年から機動特派員として、再び、ホワイトハウスを時折取材するようになるなかで、ローズと再びやりとりするようになり、オバマ政権8年間のアジア政策について総括して欲しいと依頼し、快諾を得た。
安倍首相とオバマ大統領が真珠湾を訪問することが発表された翌日の12月7日、米ワシントンで、米高官のインタビューとしては異例の長さである40分超(ホワイトハウス高官のインタビューや取材は、通常は10分から15分のことが多い)にわたり、ローズの話を聞くことができた。
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