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副業で未来を広げる

企業にとっても大きなメリットがある、副業の促進

柳川範之 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

 兼業や副業に関する議論がにわかに活発になってきた。きっかけのひとつは、ロート製薬による、副業解禁の発表だろう。とはいえ、今これだけ関心が高まっているのは、より大きな構造変化、働き方の変化を皆が感じ始めているからではないだろうか。

拡大働き方改革実現会議の有識者議員たち=首相官邸
 その大きなポイントの一つが、技術革新である。情報技術(IT)の進展によって、本業を犠牲にすることなく副業を行うことが、実は、かなり容易になってきている。かつては、働くといえば、一つの場所に皆が集まって長時間一緒にいることが不可欠な場合が多かった。しかし、今やメールやSNS等のツールが発達し、ほとんどの人がモバイルやスマホを持つ。物理的に会社にいる必要性はかなり小さくなり、同僚と同じ時間に同じ場所にいないと仕事にならない時代ではなくなってきている。週末や夜だけの時間を使うなどしても副業が十分可能になる。そんな時代になっているのだ。

 制度的な制約等もあり、現実の働き方はそこまでの変化が感じられないかもしれない。しかし、ITの進展によって、仕事の仕方に関する自由度は、たとえば10年前と比べても劇的に変化している。そのような技術的変化に合わせて、我々の実態としての働き方も、もっと自由度を高めていくことが、多くの人がより良く働けるために必要なことだろう。兼業や副業に関する議論も、そのような大きな流れの一つとして考えるべきだ。

生活防衛的なメリットと積極的な活動のメリット

 個人の視点から副業のメリットを考えると、大きく分けて、生活防衛的なメリットと、より積極的な活動のメリットがあり得る。生活防衛的なメリットとしては、一つの会社からリストラされた場合でも、別の仕事があれば、それである程度の収入を得られる点があげられる。もちろん、本業の給与の代わりにはならないだろうが、ないよりはずっとましで、大きな保険になり得る。

 また、本業で十分な仕事や所得が得られない場合でも、複数の仕事をこなすことで、トータルで十分な所得が得られるケースも多い。フルタイムで働くことが難しい状況にある人も、副業的な仕事のマーケットが広がってくれば、仕事をして活躍できる機会も広がってくるだろう。

 積極的な活動のメリットとしては、新しい仕事を身につける上で生じるリスクを減らせる点が大きい。たとえば、少し分野の異なった会社への転職、再就職あるいは起業を考えたとしても、それをいきなりするにはリスクが高い。必要な知識や能力が良くわからないケースも少なくないからだ。しかし、それを副業としてスタートさせていれば、自分の適性や必要な能力の把握は容易だ。ある程度うまくいったらそちらを本業にする、あるいは逆にうまくいかなかったら撤退することも容易にできる。

 今や、どれだけ伝統のある大企業であっても、どれだけ雇用を第一に考える会社であっても、残念ながら安穏としていられる時代ではない。もっと社外で通用するスキルを身につけるという意味でも、副業を積極的に考えていく必要があるだろう。

 その一方、企業の側からは

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筆者

柳川範之

柳川範之(やながわ・のりゆき) 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

1988年慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業。1993年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。慶應義塾大学経済学部専任講師を経て、1996年東京大学大学院経済学研究科助教授、同准教授を経て、2011年より現職。主な著作物:『法と企業行動の経済分析』日本経済新聞社,『40歳からの会社に頼らない働き方』筑摩書房、『東大教授が教える独学勉強法』草思社等。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです