どう進める「観光立国」への道
2017年02月07日
昨年12月、臨時国会で『統合型リゾート(IR)整備推進法』(カジノ法)が成立した。同法は日本でカジノ実現に道を開くものだが、与党・野党それぞれのなかでも賛否が分かれていた。訪日外国人誘致による観光立国の推進や国内経済の活性化を期待する一方、ギャンブル依存症や治安への影響などが懸念されていたからだ。
訪日外国人急増の背景には、ビザ発給要件の緩和、LCC(格安航空会社)路線の拡大、クルーズ船や免税店の増加、訪日外国人の8割を占めるアジア諸国の経済成長等がある。2016年の国・地域別の訪日外客数は、中国からが637万人(26.5%)と最も多く、次いで韓国から509万人(21.2%)、台湾から417万人(17.3%)、これら東アジアの3つの国・地域で全体の3分の2近くを占めている。
外国人の買い物をはじめとした宿泊費や交通費などインバウンド(訪日外国人旅行)消費は、国内経済にも大きな影響を与えている。観光庁の「訪日外国人消費動向調査 平成28年 年間速報値」によると、2016年の訪日外国人の旅行消費額は3兆7476億円、前年比7.8%の増加だ。一方、1人当たり旅行支出額は15.6万円と前年比11.5%の減少である。
国・地域別では、中国が1兆4754億円と全体の39.4%を占め、1人当たり旅行支出額も23.2万円と平均の1.5倍だ。費目別消費額をみると、中国人旅行者による買い物代は7832億円、全体の買い物代の54.9%を占めているが、前年比は3.2%減となり、中国人客の「爆買い」は一息ついたようにも見える。
しかし、現在でも大型のシティーホテルはもちろん、中小のビジネスホテルまで外国人観光客の姿が目立つ。東京の家電・衣料量販店などでは、接客する従業員も外国人が多い。訪日客の6割以上を占めるリピーターは、家電製品や衣料品の購入だけでは満足しない。最近のインバウンドの風向きは、大量のブランド品購入から日本の暮らしや文化の体験を楽しむなど、「モノ消費」から「コト消費」へ大きく変化しているように思われる。
国内ではインバウンド旋風を確かなものにするため、さまざまなインフラ整備が行われている。無料Wi-Fi環境の整備や道路標識・サイン・観光案内・食事メニュー等の多言語化、多様な宿泊施設や免税店、外貨両替機の拡充などだ。大都市のホテルのみならず地方の旅館や温泉における外国人対応も進んでいる。
最近、LCCでは成田、羽田、中部、関西、福岡などの主要空港だけでなく、直接、海外とその他地方空港を結ぶ路線が増え、訪日外国人の旅先が地方にも拡大している。既に、地方には訪日外国人を誘致対象にした大型アウトレットモールも出現し、地方の消費拡大と雇用の増大が期待されている。
外国人観光客を日本に呼び込む上で、大きな支障になるのが言葉の壁だ。日本語がまったく分からない訪日外国人も多く、
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