「前門の虎」(トランプ米政権)と「後門のオオカミ」(共和党)に直面。打開策は?
2017年02月24日
日米貿易摩擦の再来かと緊張感を持って迎えた2月10日の日米首脳会談では、同盟関係の強化を確認した親密なムードに包まれ、北米自由貿易協定(NAFTA)、為替監視、自動車貿易不均衡といった通商問題が表向きの問題として浮上することはなかった。日米の同盟関係の強化を確認できたことは非常に喜ばしいが、これが通商問題の解決を導くと言う意味ではない。今や、「トランプ楽観論」さえ漂っており、メディアはムードに振られ過ぎとの印象が強い。
トランプ大統領の通商政策には、米国雇用を守る強硬的な通商政策にかたくなに取り組む姿勢をあらわにしている。実際、首脳会談でも米国産業を強化し、雇用を創造していこうとするトランプ大統領の意識が非常に強いことを確認している。
外交的な「おもてなし」と、内政問題解決に向けた「ビジネス」とは別物だ。強力な同盟パートナーとしての日本の責任は重いのである。日米の通商問題は先送りされたにすぎず、高い確度を持って、再燃していくリスクが高いと考えるべきだろう。トランプ大統領にとって、NAFTAの次は中国が標的であり、その先には日米の通商問題が再燃すると考えるべきだ。
TPP(環太平洋経済連携協定)から脱却するトランプ政権は、日本自由貿易協定(FTA/EPA)に軸足を移す可能性が高い。そのなかで、通貨安誘導を監視する為替条項を盛り込む希望は強いと考えられ、円安を容認しない姿勢も強まる。自動車と国家防衛を人質に取られた形で、二国間の自由貿易協定論議に進んでいくことは、交渉上非常に不利であり、日本側は厳しい立場に立たされるリスクが高い。
これまで、トランプ政権の通商リスクは一般的にメキシコを中心とするNAFTAの領域だという認識が強かったが、これを改めるべき時期に来ている。通商リスクはNAFTAを越えて、日米間の貿易不均衡是正へ向かうリスクがある。この時、日本の自動車産業が受ける影響はNAFTAの比にはならない多大なものになってしまだろう。
現在、米国で売られている日本車がどれだけ「地産地消」となっているか。米国原産比率は16年度予想で51パーセントに過ぎず、残りはメキシコ10パーセント、カナダ11パーセント、日本が28パーセントとなる。過去にあれほどの通商摩擦を経験しながらも、米国の現地生産比率は、実際に十分「地産地消」型にはなっていなかったのである。
この背景には、エンジン、トランスミッションなどを日本で集中生産する「効率重視」の姿勢が強かった、開発体制が日本に集中し支払ロイヤルティーが多額にのぼる、魅力的な自由貿易協定のメリットを最大限に活用、国内の生産と雇用を守ろうとする姿勢といった複合的な要因があったと考える。「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ通商政策は、国内自動車産業の構造転換を再び強く迫るリスクとなりえるのだ。
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