国際競争ではアジア勢が身近な脅威に
2017年06月02日
航空大手2社がゴールデンウィーク直前の4月28日、2020年度までの中期経営計画を発表した。国内線市場の成長が鈍化する中、全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD)も、日本航空(JAL)も、国際線を成長の軸に据える。ANAはJALの牙城であるハワイを中心としたリゾート地を攻め、JALは海外の利用者にも選ばれる航空会社を目指す。
こうした中、ANAHDがもう一つの成長軸と位置づけるのが、LCC(低コスト航空会社)だ。ANAHDはグループ内に、国内初のLCCであるピーチ・アビエーションと、アジア最大のLCCであるマレーシアのエアアジアとANAHDが合弁で設立した、旧エアアジア・ジャパンが前身のバニラエアの2社を擁する。
このうちバニラは2013年12月の就航当初から、ANAHDの100%子会社。成田空港を拠点に、沖縄や札幌、台北、香港などリゾート路線に特化した戦略をとる。一方、関西空港を拠点とするピーチへのANAHDの出資比率はこれまで38.7%で、持分法適用会社だった。これを67.0%に引き上げ、4月に連結子会社化した。
ピーチの2016年3月期通期決算は、純利益が2015年3月期比2.56倍の27億4400万円となり、3期連続黒字を達成。5期目で累積損失を解消した。売上高は29.1%増の479億3900万円、営業利益が2.15倍の61億8100万円、経常利益が2.98倍の47億5900万円で、営業利益率は12.9%と、4社ある国内LCCのうち、唯一の勝ち組と言われるほど好調だ。
100%子会社のLCCを持つANAHDは、なぜピーチを子会社化したのだろうか。ANAとJALの大手2社とLCCの関係はどう変化し、日本の航空会社は世界でどう戦っていくのだろうか。
ピーチの株主はANAHDのほか、香港の投資ファンド「ファーストイースタンアビエーションホールディングス(FE)」と、日本の産業革新機構(INCJ)の3社。ANAHDがピーチを子会社化した背景には、今年3月で就航から5年を迎えたことで、残り2社は株主として果実を得たいという思惑がある。
一方、ANAHDとしても好調なピーチからは利益を得たい。しかし、この「利益」は金銭的なものだけではない。ピーチが培ってきたノウハウの逆輸入も、狙いの一つだ。
閑古鳥が鳴いていた関空が息を吹き返した要因の一つは、ピーチの就航だ。ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)は、「大阪のおばちゃんが日帰り旅行で使ってくれる」と言うように、これまで飛行機を使った旅に縁がなかった層の掘り起こしに成功した。
そして、航空券をレシート状の簡単なものにしたり、段ボールでチェックイン機を製作するなど、常識にとらわれない戦略が、ピーチそのものを成長させてきた。こうした革新的なアプローチの仕方を、ANA本体の社員に学ばせ、競争が激化する航空業界での生き残りを賭ける。
ANAがピーチからノウハウを逆輸入しようとする中、大手とLCCとの関係は今後どうなっていくのだろうか。
まず、大手とLCCは飛行機や空港といった同じプラットフォームを使う以外、別の交通機関と考えた方がいいだろう。例えば、大手では欠航が発生した際、振替輸送などは航空会社が手配する。しかし、LCCにはこうした手厚いサービスはない。
その欠航が生じる理由のひとつとして、予備機の有無が挙げられる。大手では機材故障が発生しても、予備機を手配できるようにしているが、
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