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拡大する「既成政治離れ」と新しい流れ

アメリカ、フランス、そして韓国

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

既成政治への不信

G7サミットの拡大会合を終え、イタリアのジェンティローニ首相(前列中央)と談笑するトランプ米大統領(同左)、マクロン仏大統領。2列目中央は安倍晋三首相=5月27日、イタリア南部シチリア島タオルミナ、代表撮影  

G7サミットの拡大会合を終え、イタリアのジェンティローニ首相(前列中央)と談笑するトランプ米大統領(同左)、マクロン仏大統領。2列目中央は安倍晋三首相=5月27日、イタリア南部シチリア島タオルミナ、代表撮影

 即成政治、あるいは既存政治家への不信が世界各国で拡大している。

 2016年11月8日のアメリカ大統領選挙では、事前の予想に反して共和党のドナルド・トランプが僅差(きんさ)で勝利した。民主党のヒラリー・クリントンは元ファースト・レディーであり、かつオバマ政権下の国務長官。ワシントン政治の中枢に長くいたベテラン政治家、対するトランプは実業家出身で、政治の世界の経験は浅い。獲得票数ではヒラリー・クリントが上回ったが、中西部・南部を抑えたトランプが、選挙人獲得数ではヒラリー・クリントンを抑え、勝利したのだった。僅差とはいえ、アメリカの選挙民は既成政治家を否定し、新しい流れを求めたのだった。

 そして2017年5月7日のフランス大統領選挙。1回目の投票で、社会党のアモン、共和党のフィヨンが破れ、無所属のマクロンが決選投票に進んだのだった。

 前大統領のフランソワ・オランド(2012~17年)は社会党、その前任者のニコラ・サルコジは共和党だったが、今回は社会党も共和党も決選投票に残れなかったのだ。

 アメリカと同様、フランスでも既成政党に対する不信感が強くなっていたのだ。2017年5月14日、フランス大統領に就任したエマニュエル・マクロンは社会党に属していたが(2006~09年)、2009年に無所属に、そして2016年には新政党アン・マルシェ(前進)を新たに組織し、選挙に挑んだ。

 マクロンはフランソワ・オランド前大統領の側近で、2014年には第2次マニュエル・ヴァルス内閣(大統領はオランド)で経済・産業・デジタル大臣になっているが、元投資銀行員(2008~12年、ロスチャイルド家の中核銀行であるロチルド&Cie)という異色の経歴を有している。

 そして、「左派でも右派でもない政治」を目指すと宣言し、前述した新組織「前進」を組織し、新しい政治家としてのイメージを定着させたのだった。既存の政治に不信感を強め、新しい流れを求めていた選挙民に巧みにアピールしたのだということができるのだろう。

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