グローバル市場で台頭するイノベーション主導型の民間企業群
2017年06月06日
中国経済の現状に関する評価は「悲観論70%、楽観論30%」と大きく色分けできるだろう。政府や国有企業・銀行が抱える債務の膨張、鉄鋼、セメントなどの過剰生産能力は悲観論の有力な論拠となる一方、習近平政権の強引ともいえるテコ入れ策による持ち直しへの期待感も根強い。だが、そうした悲観論、楽観論はともに中国経済の旧来の構造に根ざしたものにすぎない。今、注目すべきはグローバル市場で台頭するイノベーション主導型の中国の民間企業群という新たな波であり、その舞台は奇しくも40年近く前、鄧小平氏が「改革開放」の拠点とすべく建設した深圳なのである。
華為は柱のひとつであるスマートフォンで昨年の世界シェアがサムスン電子、アップルに次ぐ3位。サムスン追撃の急先鋒といえる勢いのあるメーカーだ。ZTEもスマホで6、7位のポジションにある。従来の中国メーカーであれば、低価格を売り物に先進国メーカーのデザインを真似た商品で、途上国、新興国市場でのし上がるというパターンだったが、両社は明らかに別の流れにある。
第一に、両社の商品は欧米、日本など先進国市場で顧客を獲得しており、価格帯も上級機種であればサムスンなどと変わりはなく、スペック的にも遜色はない。低価格を強みにはしていないのだ。第二に、両社とも基地局設備、Wi-Fiモデム、サーバーなど幅広いハードに加え、「第五世代」など通信の最先端で地歩を築いている。華為は空港や鉄道の管制システムから電力、交通、メディアなどの制御すなわちICTを使った社会インフラに事業の軸足を移しつつある。価格の叩き合いで疲弊する商品分野に依存しない経営に向かっているのだ。
華為、ZTEはともに深圳生まれのメーカーであり、中国の特許出願件数の企業ランキングではトップ10の6社が深圳の企業で、中国の特許出願の46%は深圳が占める。つまり、深圳は中国の「イノベーションの首都」なのだ。
さらに注目すべきは深圳のスタートアップ企業だ。技術と商品アイデアを持つ若手起業家が深圳に集まり、
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