日本型雇用の根底にある「メンバーシップ型」の弊害にメスを入れよう
2017年06月23日
週休3日制を採用する企業が増えている。
厚生労働省の調べによると、週3日以上の休みを設けている企業の比率は全体の8%(2015年)になり、10年前の3倍にのぼる。政府が今年3月に決めた「働き方改革実行計画」の「長時間労働の是正」にも沿うことから、今後さらに増えそうだ。
一口に週休3日制と言っても、企業によって形は様々だ。「1日8時間・週5日」勤務を「1日10時間・週4日」にして週40時間勤務は変えない企業もあれば、「1日8時間」のまま週4日勤務にする企業もある。
実施の理由は、人材確保や離職防止という点でほぼ共通している。
介護や育児を抱える社員をキープするには働きやすい環境を整えることが欠かせない。人手不足が深刻な小売り、外食、物流、介護業界などが先行しているのはそのためだが、いずれ他業種にも広がるだろう。
1年半前、電通社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が、長時間労働が重なって自殺するという痛ましい事件が起きた。メディアは盛んに報道したが、「鬼十則」が象徴する電通固有の問題としてとらえられ、日本型雇用の構造的な問題として検証されなかったのは残念だった。
構造的な問題とは、ほとんどの日本企業が採用する「メンバーシップ型」の労働体系が、時代の変化に合わなくなっているという現実である。今回も、週休3日制の急な拡大ぶりだけ見ていると、電通の時と同じように、構造問題を見過ごすことになりかねない。
メンバーシップ型とは、EU労働法の専門家である濱口桂一郎氏が、欧米の「ジョブ型」(注)に対比して付けた名前である。「就社型」とも呼ばれ、世界でも特異な雇用形態とされる。
(注)ジョブ型
企業は個々のジョブ(業務)を遂行するために労働者と契約を結んで雇用する。欧州では企業をまたぐ職業別の技能形成や相互扶助などのセーフティーネットが発達し、ジョブ型を支えている。
メンバーシップ型では、社員に採用することは組織のメンバーとしての地位や身分を与えることであり、定年まで昇進や賞与、能力研修、厚生福利などを保証する。その代わり、会社の人事裁量権が大きく、忠誠心を求められ、長時間労働や滅私奉公も我慢してもらわないと困る、という関係にある。
電通の事件では、高橋さんは入社直後からメンバーシップ型の特徴である長時間労働の業務に直面。上司からも滅私奉公を当然のように強いられ、心身共に疲弊していったのだろう。
メンバーシップ型の中心にいるのは伝統的に日本人の男性正社員である。女性は主に家庭にいて、夫の長時間労働を助ける役割を期待される。高度成長期には威力を発揮したが、2000年代以降は事情が変わり、むしろ弊害が目立ってきた。
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