働き手の暮らしやすさから働き方を見直す改革がなければ、女性活躍はありえないのだ
2017年07月14日
「働き方改革」「休み方改革」「人づくり改革」と、働く場をめぐる「改革ラッシュ」が続いている。だが、「働き方改革」の中身を冷静に点検していくと、これらは政府が掲げてきた「女性活躍」に逆行する部分が少なくない。女性が働く上での基本的な要件が、そこには欠けているからだ。
女性の活躍しやすさを示す「ジェンダーギャップ指数」(GGI)で、日本は昨年、144カ国中111位と最低を更新した。原因は、女性が安心して働くための三つの条件の整備の不足にある。
その一つ目が、一日の労働時間規制、二つ目が残業なしでも生計を立てられる賃金設計、三つ目が、ライフスタイルに合わせて働く側が労働時間を選べる仕組みだ。
女性労働の特性は、家事・育児・介護などの無償のケア労働を抱えながら働くということだ。
夕方には職場を出られるような一日の労働時間規制がなければ、子どもは食事さえとれない。シングルファーザーに代表されるように、男性にとっても一日の労働時間規制は人らしく生きるために必須の条件だ。労働基準法の「1日8時間労働」の規定は、そのためにある。
同時に、そうした労働時間でも生計を立てられる時給水準がなければ、労働時間規制は絵にかいたモチになる。
だが、女性の労働相談にあたる「働く女性の全国センター」やパート労組には、短い労働時間シフトのせいで生計が立てられず、かけ持ちパートをするしかないという女性たちからの悩み相談が増えている。
必要な時だけ働き手を呼び出すことで人件費をぎりぎりまで削減しようとする「細切れ雇用」が進み、また、昨年、従業員501人以上の会社で週20時間以上働くパートの厚生年金への加入が義務付けられ、その社会保険料負担を避けようと、短時間パートを増やす動きも目立っているからではないかと見られている。
正社員女性の長時間労働とともに、非正社員女性の間での強制的細切れ労働化が進み、働き手が労働時間を選べる仕組みがなければ「ワーク・ライフ・バランス」どころか、女性の貧困化が進みかねない事態が生まれていることになる。
だが、今回の「働き方改革」では、こうした働く女性の実態は視野の外だ。
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