接触事故が各地で頻発、「障害物を見ている時間61%減少」という研究結果も
2017年08月07日
ガラケー時代にも歩きながらケータイを触っている人はいた。ほとんどが若者だった。女子高生らがガラケーでメールを打ちながら歩いていた。当時のガラケーではできることが限られていた。だが、現在のスマホは画面も大きくなり、ガラケーと比べると動画やSNS、ゲームなどできることも多くなり、若者だけでなく、老若男女が「歩きスマホ」をやっている。
交通機関や携帯電話会社などが積極的に「歩きスマホは危険だからやめよう」と駅や電車内での放送、ポスターなどで訴えても、ほとんど効果がない。ポスターなど「歩きスマホ」をしている人はスマホしか見えていないので、そもそも目にもまらないのだろう。
英国のアングリア・ラスキン大学の研究者らが2017年7月に「歩きスマホ」によって人々の歩き方が変わったという研究成果を明らかにした。モバイル・アイトラッカーとモーション分析センサーを装着した人がスマホを見たり、電話しながら、道路に置かれた障害物を跨ぎながら歩いてもらって試験を行ったそうだ。
調査結果によると、「歩きスマホ」をしている人は、障害物を見ている時間が最大61%減少しているとのこと。つまり、スマホにばかり目が行っているので、障害物がほとんど目に入ってない。また障害物を跨ぐ時に「歩きスマホ」をしている人は、障害物で転倒することを恐れて、普通に歩くよりも大きな動作で慎重に跨ぐそうだ。特にスマホに文字入力する時に、その傾向が見られるようで、遅い速度で、より高く足を上げるそうだ。スマホで文字を入力している時は、通常よりも足を18%高く、40%ゆっくりと上げているそうだ。そのためスマホに文字入力をしている時の方が奇妙な歩き方になるようだ。
「歩きスマホ」をしている人は、スマホしか見ていないから他人の「歩きスマホ」の姿を見たことはないかもしれないが、うつむきながらスマホを見て歩いている光景は異様だ。このような姿は歩いている時だけでなく、信号待ちの時でも、電車の中でもよく見られる。海外ではその姿をよくゾンビに例えられている。
スマホが世界規模で普及し、あらゆる情報がスマホでチェックできるようになった現在、「歩きスマホ」をやめることはもう難しくなってしまったのかもしれない。それならと、「歩きスマホ」をすることを前提にした道路の設計も世界各地では進んでいる。「歩きスマホ」をしていると上述のように歩き方が奇妙になるだけでなく、歩行が遅くなり、「歩きスマホ」をしないで歩いている人にとっては迷惑だ。例えば中国の重慶では2014年9月に中国初の「歩きスマホ専用レーン」が設置された。レーンが設置されたのは重慶市の人気の観光スポット「洋人通り」で、レーンの全長は50メートル、幅3メートルである。2レーンに分かれており、1つがスマホ利用者専用の「歩きスマホ専用レーン」で歩行者は「歩きスマホ」をしながら歩行可能、もう1つが「歩きスマホ禁止レーン」でこちらでは「歩きスマホ」は禁止である。
また多くの人が信号待ちでスマホをチェックしている。中にはスマホに夢中になって、信号を無視して渡ろうとする人もおり、自動車との接触や事故につながることが多く、非常に危険だ。これは日本だけでなく世界中で共通だ。ドイツのミュンヘンでは2016年に15歳の少女がヘッドホンをしながら「歩きスマホ」をしていて、トラム(路面電車)に気が付かず、トラムと接触して死亡する事故が発生した。ドイツやヨーロッパの多くの町では
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