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五輪後も日本経済は持続可能か

安倍政権は金融緩和の成果だけでなく、副作用も率直に語るべきだ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

「一時しのぎの姑息なやり方だ」―企業トップが政権を批判

経済同友会の夏季セミナーでは、企業トップから安倍政権の財政運営に厳しい声が相次いだ=7月14日、長野県軽井沢町 経済同友会の夏季セミナーでは、企業トップから安倍政権の財政運営に厳しい声が相次いだ=7月14日、長野県軽井沢町

 2020年の東京五輪後の経済の行方を懸念する声が高まっている。

 現状は日銀の高圧的な低金利政策や国債発行に頼る財政出動で、ほどよい景気を維持している。しかし、その陰で国債・株式市場の本来の機能は衰え、国の債務残高は増え続けている。たまったひずみが五輪後に噴き出しかねない。

 7月中旬に軽井沢で開かれた経済同友会の夏季セミナー。安倍政権の経済政策に、企業トップから厳しい意見が相次いだ。

 政府は財政再建の目標に「債務残高のGDP(国内総生産)比率」という項目を新たに付け加えた。武藤光一・商船三井会長は「これは、GDPが増えるなら国の借金をいくら増やしてもよいという、一時しのぎの姑息(こそく)なやり方」と指摘。東京海上ホールディングスの隅修三会長は、社会保障費の増加を踏まえ、「消費税率は10%を言わねばならないのに、いまだ言えていない」と批判した。

楽観的な高成長の経済見通しに異議あり

政府による債務残高の試算(GDP比%)政府による債務残高の試算(GDP比%)

 小林喜光・代表幹事は「財政の真実を語る」、「経済の持続可能性を考える」の2点をあげた。

 「問題は五輪後の経済をどうするか。政府は実質成長率2%超、名目3%超を仮定して計算しているが(グラフ1、だいだい色)、これはほとんどあり得ない好条件。実際には1%、2%が良いところではないか。現実を直視してほしい。その上で議論しないとこの国は崩壊する」(8月8日付日経新聞)。

 国民が嫌う増税は先に延ばし、国債依存は止まらず、楽観的な予測を振りまく――政府に近いと見られがちな経済界から、これほどの不信感が噴出するのは珍しい。安倍1強が揺らいだことで、一気にフタが取れたのかもしれない。

「支持率回復のため、国債発行で大型経済対策を」という発言

 セミナー直前には、藤井聡・内閣官房参与(京都大学大学院教授)のこんな発言が報道された。

 「財政拡大は必ず国民の評価を得る。景気回復は支持率回復につながる。10兆円の大型経済対策が必要で、財源は国債発行で賄う」(7月13日ブルムバーグ)。

 安倍首相の窮地を救うために10兆円もの国債を追加発行しようという話だ。自民党内では選挙に弱い若手議員を中心に、財政再建目標の撤廃を求める動きすらある。

 実際、来年度予算の概算要求は101兆円となり、前年度に続き100兆円の大台を超えた。安倍政権は歳出の上限設定を5年連続で見送っているので、各省庁は競って要求額を拡大。国債発行が「打ち出の小づち」になっている。

鳴らない「警戒警報」 結局はヘリコプターマネーで救済か

 政府が発行する国債のほとんどは日銀が購入している。いったん銀行を経由するが、実態は日銀による「財政ファイナンス」だ。日銀の買い占めで国債価格は常に高く(金利はゼロに)操作されている。

 本来、金利は景気の好不況に応じて市場で決まるものだ。国債を大量発行すれば価格は下がり(金利は上がり)、おのずと発行額に歯止めがかかる。しかし、今は「官製金利」で調節機能が働かず、過剰な国債発行にも「警戒警報」が鳴らない。

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