最大の問題は米軍と「白人至上主義」がまったく相いれないことだ
2017年09月01日
8月12日にバージニア州シャーロッツヴィルで起きた「白人至上主義」を標榜(ひょうぼう)するグループと、とこれに抗議する人びとの間で起きた衝突に対し、トランプ大統領が「白人至上主義」を明確に非難しなかったことで、大きな混乱を招いている。
事態を決定的に悪化させたのは、15日の大統領記者会見である。大統領は「白人至上主義者のなかにもいい人はいる。反対派にも暴力的な人がいた。(バージニア州での衝突は)双方に非がある」と、まるでけんか両成敗のような態度を取ったのである。
多くの企業経営者が、大統領のこの発言に反発して、大統領への助言組織からの辞任を表明し、トランプ氏は二つの助言組織、「製造業評議会」と「戦略・政策評議会」を解散せざるを得なくなった。大手製薬会社メルクのケン・フレージャーCEOが辞任の口火を切ったが、これに続いたのは、インテル、スリーエム(3M)、ジョンソン&ジョンソン、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ユナイテッド・テクノロジー(UT)、IBM、J.P.モルガン等々のアメリカを代表する大企業のCEOたちだ。
本来であれば、アメリカの大企業にとり、政府と対立するのは好ましくないはずである。政府の規制と無縁な企業など存在しない。さらに、これらの大企業の中には、連邦政府との取引の比重が大きい企業も存在する。そうであるにもかかわらず、アメリカを代表する大企業のトップたちが一斉に反旗をひるがえしたのは、トランプ大統領の発言が、アメリカ人の常識からは考えられない、完全に一線を超えたものだからである。
KKKやネオ・ナチのような「白人至上主義」は、アメリカ社会では絶対的なタブーである。「これを明確に非難できない大統領とは一線を画す必要がある」と多くの企業経営者が考えても何の不思議もない。ここでハッキリとした態度を示さなければ、消費者による不買運動にさらされるリスクが極めて大きい。さらに、これらの大企業は世界中で多様な人材を雇用している。ダイバーシティー(多様性)を否定しては組織が持たない。
大統領の無分別な発言に対して異を唱えたのは、企業経営者ばかりではない。驚くべきことだが、米軍の現役幹部が次々とトランプ発言に対し、批判的な意見を表明している。
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