江戸の商家「家訓」の戒めを現代に重ねて読む
2017年10月23日
神戸製鋼所(神鋼)のデータ改ざん問題は、アルミ・銅から主力の鉄鋼にまで広がり、深刻な経営問題になってきた。現場では10年以上前から不正行為が黙認され、取締役会も事実を把握しながら、2カ月近く公表をためらっていた。
9月には日産自動車が完成車検査を無資格者にやらせていたことが発覚。その前は、決算を粉飾した東芝、燃費データを改ざんした三菱自動車と、短期間に不祥事が次々に露呈した。日本企業の根底部分が劣化しているようだ。
とくに神鋼の場合、過去に多くの不祥事を起こしている(上の表)。その都度反省を口にしながら、懲りずにまた不正を繰り返す。現場で一体何が起きているのか。
工場の品質保証担当者が「これぐらいならいいか」とデータを都合よく書き換える。「それはまずい」と思う社員もいるだろうが、うかつに言い出せば上司や同僚ににらまれる。一生冷や飯を食うかもしれない。まあ放置しておこうか――罪の意識は鈍くなり、気がつけば組織全体がデータ改ざんに励んでいる。
幹部も保身のために不正を黙認し、部門代表として取締役に選ばれる。その取締役会も当然、身内の恥をさらすような不正是正に動くことはない。だから10年以上も不正が続いたのだ。内外のユーザー企業や消費者が受ける迷惑を真剣に考えたとは思えない。東芝や三菱自でも散々見せられた構図である。
最近、歴史研究者の間で、江戸期のモノ作りの巧みさや職人魂、資源を無駄にしないエコシステムなどが再評価されている。商家が歴代引き継いできた家訓もその一つだ。
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