上策から下策まで対米交渉の選択肢はいろいろある
2017年10月20日
10月16日、麻生副総理とペンス米国副大統領の間の日米経済対話で、同副大統領が日米FTA(自由貿易協定)に強い関心を示したと報道された。
アメリカで日米FTAを最も推進しているのは農業界である。パーデュー農務長官は日米FTAを熱望していると発言している。背景にあるのは、日本が主導するアメリカ抜きのTPP(環太平洋経済連携協定)11交渉である。
TPP11が実現すれば、アメリカは38.5%の関税を払わなければ日本に牛肉を輸出できないのに、豪州は9%の関税を払うだけでよい。同じことが、小麦、豚肉、ワイン、バター、チーズ等で起きる。アメリカの農産物は日本市場から駆逐され雇用は失われる。日本がワイン、豚肉、チーズ、パスタなどの輸出国であるEUとも自由貿易協定を結べば、アメリカ農産物の日本市場での状況は決定的に悪くなる。
私がアメリカ抜きのTPPを主張した際に指摘した通りの心配を、アメリカ農業界がしているということである。アメリカがTPPに復帰すれば、この問題は解決する。それが私の主張の狙いだった。アメリカ抜きのTPP11交渉の目的はアメリカをTPPに復帰させることである。
しかし、トランプ大統領がTPPから脱退すると宣言した以上、アメリカはTPPには簡単には戻れない。したがって、日米FTAを結んでアメリカ産農産物が不利にならないようにしたいというのである。
これに対して、日本政府や農業界は日米FTAとなれば、アメリカはTPP以上に関税の削減や撤廃を求めてくるのではないかと心配しており、日米FTAには応じられない。しかし、トランプ大統領がAPEC首脳会議の直前の11月5日に来日する。トランプ大統領から日米FTAの要求があった場合どう対応してよいのか、対米関係を極めて重視する外務省は頭を抱えていることだろう。
上策から下策まで選択肢はある。
上策は
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