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江戸時代の豊かな遺産

この時代を正当に再評価する必要がある

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

庶民文化の花が開いた江戸時代

親しかった京都の画家が描いた晩年の上田秋成(部分)=柿衞文庫提供 拡大親しかった京都の画家が描いた晩年の上田秋成(部分)=柿衞文庫提供

 アメリカのジャパノロジスト、スーザン・B・ハンレーが「江戸時代の遺産」(指昭博訳・中央公論社・1990年)を書いたのはもう今から30年近く前のことだ。そして彼女はこの時代の庶民生活が豊かだったことを指摘し、「19世紀に生きたならば、金持ならイギリス、労働者ならば日本に住みたい」と述べている。

 たしかに、江戸時代の庶民はかなり豊かだったし、また、文化文政時代(1804~1830年)やその前後には庶民文化の花が開いたのだった。

 黄表紙の恋川春町・山東京伝、「東海道中膝栗毛」の十返舎一九、読本の上田秋成(「雨月物語」の作者)、「南総里見八犬伝」の曲亭(滝沢)馬琴、和歌の良寛、俳諧の与謝野蕪村らが活躍した時代だ。

 国学や蘭学では本居宣長や杉田玄白、浮世絵の喜多川歌麿・葛飾北斎、文人画の池大雅・谷文晁、日本画の円山応挙とまさに多士済々だった。歌舞伎も4代目鶴屋南北が脚本を書き、7代目市川団十郎・3代目尾上菊五郎が活躍した時代でもある。相撲が隆盛を極めたのもこの時代。雷電為右衛門が活躍し、江戸相撲は大いに盛り上がっていた。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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