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日本は「廃業社会」。これからが本番だ

倒産件数はたしかに減った。でもその裏で「大廃業時代」が到来していた

中島隆 朝日新聞編集委員

「せめて、黒字企業だけでも救いたい」

ビズリーチの南壮一郎社長=11月28日、東京都内

拡大ビズリーチの南壮一郎社長=11月28日、東京都内

 この11月28日のことです。東京都内で、ある新サービスを始める、という記者発表会見がありました。

 発表者は、「ビズリーチ」の南壮一郎社長です。

 「ビズリーチ」は、インターネットで転職を支援しているベンチャーです。テレビを見る方なら、人さし指を立てて「ビズリーチ」と言うCMを見たことがあるかもしれません。

 南さんは、子どものころをカナダで過ごし、米タフツ大を卒業し、モルガン・スタンレー証券に入社し、企業のM&A(合併・買収)を担当します。その後、プロ野球の楽天イーグルス創業メンバーになるなどして、2007年に起業した人です。

 前例を嫌い、常識を嫌う「あまのじゃく」。魂をこめてチャレンジし、そんな南社長が、熱をこめて言いました。

 「せめて、黒字企業だけでも救いたいのです」

 どんなサービスを始めるというのでしょうか。

 そのまえに、中小企業をとりまく今、を説明しておかなくてはなりません。

「めでたし、めでたし」ではない

休廃業・解散と倒産の推移(東京商工リサーチまとめ)拡大休廃業・解散と倒産の推移(東京商工リサーチまとめ)

 安倍政権の人たちは、アベノミクスの成果を、いろいろ言っています。

 そのひとつが、倒産件数が減っていることです。

 たしかに、倒産件数は減っています。東京商工リサーチのまとめでは、2008年には1万5646件だったのが、翌09年に減りはじめ、14年に1万件を割り、16年には8446件になっています。

 めでたし、めでたし……、ではないのです。

 同じく東京商工リサーチのまとめでは、休業、廃業、そして解散する企業の件数が増えています。2008年には2万4705件だったのが、16年には2万9583件と、3万件寸前の過去最悪になっています。

 「このまま経営しても、先の見通しが立たねえや」「跡継ぎもいねえしな」「深手を負うまえに、会社、やめちまおう」という中小企業が増えているのです。

 倒産件数と「休廃業・解散」の企業件数を足してみます。2016年は3万8029件でした。15年比べて2千件近く増えているのです。ここ10年、3万5千~約4万と、高止まりをしているのです。

 これで、胸を張れるわけがありません。つまり、日本から消えていく企業の数は、あまり変わっていない。というか、むしろ増えはじめたということになります。

 倒産件数は減った。でも、その裏で、大廃業時代がすでに到来していたのです。

 日本の中小企業の経営者は、2025年に約245万社、6割以上が引退の時期を迎えますが、いま、その半分にあたる127万社で、後継者が決まっていないと言われています。

 大廃業時代は、いまはまだ序章、これからが本番になりそうです。

 休廃業している企業の半数が黒字のまま廃業に

 先月あった記者会見にもどりましょう。ビズリーチの南社長は「黒字の会社だけでも救いたい」と言いました。

 じつは、休廃業している企業のほぼ半分が、黒字のまま廃業しているのです。経営をひきつぐ後継者がいないのです。

 ビズリーチがはじめると発表したのは、中小企業のM&Aをすすめる「ビズリーチ・サクシード」というサービスでした。

 インターネット上で、事業を譲りたいと考えている企業と、譲り受けたいという企業を引き合わせてM&Aにつなげる、というのです。

 ビズリーチは、転職などで7200社を超える企業と向き合ってきました。いい人材を地方の中小企業などに送り込むことに成功してきました。

 そんな中で、いまそこにある最大の危機に直面しました。

 それが、大廃業時代の到来、だったのです。

 このまま廃業がすすんでしまうと、雇用の場がなくなります。多くの市民が苦しみます。さらに、経済成長ものぞめません。

 いままでも、企業、金融機関、政府などが、事業継承についていろいろ知恵を絞ってきました。けれど、大廃業時代は来てしまいました。

 「手遅れにならないように、いま」。南社長はそう言います。

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筆者

中島隆

中島隆(なかじま・たかし) 朝日新聞編集委員

福岡生まれの千葉育ち。1986年に朝日新聞入社、2012年4月から現職、自称「中小企業の応援団長」。手話技能検定準2級取得。著書に「魂の中小企業」「ろう者の祈り」(いずれも朝日新聞出版)「塗魂」(論創社)など。

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