スマート家電が侵入口に。日本の安全ブランドは守れるか
2017年12月19日
2020年の東京五輪がサイバー攻撃の格好の標的になると見られている。日時がすでに公開されており、攻撃側にとっては知名度を上げる絶好の機会になるからだ。政府は若手のホワイトハッカー(善意のハッカー)育成などの対策を急ぐが、関係者の緊張は日々高まっている。
今年5月、五輪関係者の肝を冷やす事件が起きた。「WannaCry」と名付けられたランサムウェア(画面をロックしてファイルを暗号化し、その解除と引き換えに「身代金」を要求するウイルス)が世界中に拡散。わずか24時間で150カ国の30万台を超えるパソコンが感染した。
日本でも1万6千台以上が被害にあった(上の写真参照)。もし東京五輪の際に発電所、鉄道、エアライン、行政機関などの重要インフラがサイバー攻撃されたら、身代金どころか、経済システム全体が大混乱する。
前回リオ大会では、五輪の公式サイトに大量のDDOS攻撃(攻撃用パケットを大量発信して標的のサーバーをマヒさせる)が集中した。視察した日本の内閣サーバーセキュリティセンターによると、競技に大きな問題は発生しなかったが、攻撃のターゲットは徐々に州政府やリオ市、警察、銀行、建設業者など、防御の手薄なサイトに移行し、情報窃取や機能マヒなどの被害が出たという。
同センターは「東京はリオに比べ知名度が高く攻撃側にとって狙いがいがある。20年には攻撃技術は今より更に進んでいるはずで、リスクはとても高い。特効薬はないという前提で多層防御し、仮に侵入されても被害の拡大を防ぐ」と言う。
5月の大規模攻撃について、セキュリティー企業のマカフィー社はこのほど調査リポートを発表した。犯人は分かっていないが、手口は明らかになった。
攻撃は韓国で2月にひっそりと始まった。約100台のパソコンがランサムウェアに感染し、0.1ビットコイン(当時のレートで100ドル)の身代金を要求してきた。ネットへの侵入口は、Windows2000やWindowsXPなど旧式ソフトが持つ脆弱(ぜいじゃく)性(穴)だった。
米マイクロソフトは以前から、ユーザーに問題箇所への対応を取るよう呼びかけていたが、攻撃側はこの穴を持つパソコンを見つけて侵入。そこを起点にしてランサムウェアを拡散させた、とリポートは推定している。
ネットの脆弱性は旧式のWindowsだけではない。国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)の徳田英幸理事長は「スマート家電、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)、健康機器などが攻撃の踏み台に使われやすい」と警告する。
スマート家電とはネット接続したテレビ、冷蔵庫、エアコン、監視カメラなどを言う。データの収集や管理、省エネ、メンテナンスなどが目的だ。
その多くは元々ネット接続を考えずに設計された。後になって「遠隔操作でメンテナンスが出来たら便利だろう」と、Telnet(テルネット=ネット接続された機器を遠隔操作するためのシステム)が後付けされている。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください