影響がないのに巨額の予算が計上されるTPP対策
2017年12月19日
2017年度の補正予算2兆7千億円の中で、農林水産省分は4千6百億円、そのうちTPP(環太平洋経済連携協定)関連農業対策には3,170億円が計上されると報道されている。日EU自由貿易協定対策として国産チーズの競争力強化に150億円、それ以外にも畜産の体質強化対策として1千億円超が組まれる。財務省は2千億円台の前半に圧縮しようとしたのだが、農林水産省、自民党農林族議員が3年連続の3千億円台を主張し、押し切ったようだ。
農業に影響はないのに、自民党政府は、TPPで影響を受ける農家への対策を行うという。似たような光景が20年前にもあった。1995年のウルグアイ・ラウンド対策である。
ウルグアイ・ラウンド交渉で米のミニマム・アクセス約80万トンを受け入れるにあたり、細川内閣は、国内の需給に影響を与えないという閣議了解を行った。
つまり、輸入はするのだが、輸入した米と同量の国産米を政府が買い入れてエサ米や援助用に処分するので、国内の生産を減少させる必要はないというものだった。しかも、当面関税化しないで、今まで通り輸入制限は維持・継続するのだから、国内農業には、まったく影響はない。したがって、何らの国内対策も必要なかった(1999年に関税化)。
それなのに農業の合理化を進めるのだという理屈がとってつけられ、6兆100億円の対策が打たれた。使い道に困った市町村は、自由化対策とは関係のない温泉ランドなどを作った。
今回のTPP対策は関税が削減される畜産物対策が中心である。しかし、豚肉について、農林水産省はその基本的な輸入制度は守ったので輸入は増えないと主張していた。牛肉については38.5%の関税が15年後に9%に削減されるが、為替レートがこの数年間で4割も円安になっているので、3割程度の関税削減を円安が帳消しにしてくれている。すでに書いた通り、チーズについても影響がない。これはEU官僚の失敗だった。
https://webronza.asahi.com/business/articles/2017070700004.html
今回も影響がないのに行われるのがTPP対策である。
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