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アベノミクスが壊す〝みずほの国・日本〟

改革を銘打った表の看板はキャッチコピーなどで彩られているが、その裏側は……。

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

キャッチフレーズの政治

記者会見する安倍晋三首相=首相官邸拡大記者会見する安倍晋三首相=首相官邸

 安倍総理は〝みずほの国〟というキャッチフレーズが好きだ。農業政策について言及する時には、この言葉がよく使われる。前回の政権の際使用された〝美しい国日本〟を代表するのが、黄金色に染まる秋の水田なのだろう。

 これだけではなく、キャッチコピーやスローガンが好きなようだ。農政改革について40年で初めてとか、60年間誰も行わなかったとかの言い回しが使われる。例えば、2014年には「攻めの農業改革を進めています。40年続いていた、いわゆる『コメの減反』を廃止し、これまで手をつけることすらタブー視されていた農協も、60年ぶりに抜本改革を行います」とスピーチしている。

安倍総理は稀代の宰相?

 これを聞くと、安倍総理は中曽根康弘や小泉純一郎という改革派の総理もできなかった改革を成し遂げた稀代の宰相のようだ。しかし、実際には、安倍政権の農政改革は、羊頭狗肉と言ってよいほど看板と政策の中身が異なる。

 改革を銘打った表の看板はキャッチコピーやスローガンできれいに彩られている。しかし、その裏側で、実際の政策内容は農業村の既得権を擁護・拡充したものとなっている。政策変更ではあるが、改革と名乗るほどの内容のものではないか、いわゆる〝改革〟とは逆の方向への政策見直しとなっている。

 これは安倍総理が農林水産省、自民党農林族、農協などの農業村に政策の中身を丸投げしてきたからだ。かつて総理吉田茂は農地改革を和田博雄農林大臣に丸投げした。しかし、それは和田が農地改革を徹底的に遂行する意欲と能力を備えた改革者だったからだ。改革を望まない農業村(当時は地主階級)に丸投げしたのではない。

丸投げと農業村の高笑い

 農協改革についてはたしかに60年ぶりだろうが、農業村に調整を委ねた結果、改革は部分的な微温的なものにとどまった。特区制度による企業の農地所有については、農業村は安倍総理の発言を逆手にとって、対象を兵庫県養父市に限定してしまった。

 日EU自由貿易協定でチーズ生産に影響があるとして国内対策が講じられることになった。輸入が増えて国産チーズ価格を引き下げざるを得ないという影響があるのであれば、チーズの原料となる生乳の価格を下げなければならないのに、昨年12月、ホクレンは逆にチーズ向け乳価を4~5円(1割程度)引き上げた。これは私が以前指摘したように、自由化の影響がないことをホクレンも乳業メーカーも認識していることを示している。

https://webronza.asahi.com/business/articles/2017070700004.htm

 つまり、総理の丸投げを利用して、農業村は自由化の影響がないのに予算を増やしたのである。

 農業村の高笑いが聞こえるようだ。しかし、我々国民が気を付けなければならないのは、本当に笑われているのは丸投げした人だけではないことだ。

安倍総理のフェイクニュース

 丸投げとは逆に、農業村が行った改革とは真逆の政策変更を、安倍総理が丸受けし、内容も理解しないで大改革に仕立て上げてしまったのが、〝減反廃止〟という官邸作成のフェイクニュースである。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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