女性が真に活躍するには、女性の生きづらさを根本から解消していく政策こそが必要だ
2018年03月22日
森友学園の文書改ざん問題などにかき消されたか、めっきり話題にのぼらなくなった安倍政権の「女性が輝く」政策。そんな中で3月の国政女性デー前後、外国メディアから、「女性活躍」政策が推進される日本で、なぜ「ミー・トゥー」運動は盛り上がらないのか、という質問が相次いだ。
米国などでセクシュアルハラスメントの被害者たちが「ミー・トゥー(私も被害にあった)」と相次いで名乗りを上げ、各国に波及したこの反セクハラ運動が、なぜ日本では広がりが見られないのか。背景には、「女性活躍」と「女性の人権」との微妙な関係がある。
国際女性デーの3月8日午後7時、東京・表参道の国連大学前を出発した「ウィメンズマーチ東京2018」には、雨の中、「ミー・トゥー」などのプラカードを掲げて、昨年の約300人を大きく上回る約750人(主催者発表)が参加した(写真)。
「賃金安くて マジでヤバイ!/長時間労働 マジでヤバイ!/暴力うけた マジでヤバイ!/セクハラ、パワハラ マジでヤバイ!/我慢するのは もう限界!」――。そんなスローガンからもうかがえるように、ここでは働く女性の6割近くを占める非正規の低賃金や、家庭を抱え、長時間労働やセクハラ、パワハラで働き続けにくい女性たちが直面する労働問題が重要な柱となっていた。
「女性活躍」「働き方改革」が政府の重点政策とされていることを考えるなら、重要な行進だったはずだ。だが、この行進についてのマスメディアの報道はほとんどなかった。
中でも気になったのは、翌3月9日のNHKニュースの報道ぶりだ。ここでは、「セクハラ行為に抗議しSNS上で『#MeToo(ミー・トゥー)』というハッシュタグを使って被害を公表する動きが拡散する中、『国際女性デー』の8日、世界各地で女性たちが権利の向上を訴えるデモ行進を行いました」と始まり、スペインで女性たちが鍋やスプーンを持って路上に繰り出し、男女間の収入の格差の解消や家庭内暴力の根絶、家事や育児は女性が担うべきだという固定観念からの解放を訴えた行動や、フランスや韓国、アフリカのギニアなどでの女性によるデモ行進を報じた。
にもかかわらず、足元の東京などでの行進には触れず、「女性の地位向上を目指す国連の組織『UNウィメン』は、世界の男女の収入の格差は依然23%に上り、職場などでの女性に対する性的嫌がらせも横行しているとして、女性が人間らしく生きられるよう権利を主張し続ける必要性を訴えています」(3月9日付NHK「NEWSWEB」から)と、どこかよその国の現象であるかのように締めくくってニュースは終わった。
このような位置づけなら、男女の格差を示すジェンダーギャップ指数(GGI)が2017年に144カ国中114位(前年111位)に落ち込んだ地元日本での行進は報道されてしかるべきだった。
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