インドネシアに根付いた『便利屋』GOJEK
バイクタクシーからデリバリーまで幅広いサービスを提供、スマホ普及で事業拡大
佐藤仁 学術研究員/ジャーナリスト

ビルの前で客待ちするバイクタクシーの運転手=ジャカルタ
2018年1月にGoogleがインドネシアのバイクタクシーを運営するGOJEKに出資することを明らかにした。GOJEKには、これまでにも中国のIT大手テンセントなどが出資している。世界の大手IT企業が注目するインドネシアのGOJEKとはどういう会社なのだろうか。
昔からあるバイクタクシー
インドネシアの首都ジャカルタは「世界の駐車場」と言われるほど渋滞がひどい。道路は通勤時間帯だけではなく常に渋滞しており、自動車で移動していたら、時間通りに到着することは難しい。一方通行の道路も多いため、事故などで道路が封鎖されている場合にはさらに渋滞を加速させる要因となっている。そのような渋滞天国のジャカルタでは約束の時間に間に合わせるためには自動車ではリスクが高い。
そこで現地では昔から「オジェック(OJEK)」と呼ばれるバイクタクシーが一般的な移動手段として存在していた。ショッピングセンターやデパート、オフィス街の入り口や駐車場近辺には、客待ちをしている「オジェック(バイクタクシー)」が非常に多かった。だいたい5,000ルピア(約50円)から乗れる。もちろん目的地までの距離、荷物の量、雨が降っているかいないか、時間などに応じて料金は異なり、乗る前に運転手と交渉する。
GOJEK登場で、バイクはスマホで呼ぶ時代に

スマホを専用ケースに入れて客からの情報をチェック=ジャカルタ
そのインドネシアでのバイクタクシーの様相がここ数年で大きく変わった。GOJEKとGRABという2社がスマホで簡単にバイクを呼べるサービスの提供を開始したためである。GRABはインドネシア以外にも東南アジアでサービスを展開しており、ソフトバンクも少しだが出資している。インドネシアでは特にGOJEKの人気が高い。
GOJEKは2010年から「バイクタクシー」のサービスをジャカルタで提供している。スマホのGOJEKアプリでは地図情報としてGoogleマップを利用しており、利用者はGOJEKアプリ内で表示されるGoogleマップから近くにいるバイクを選んで呼ぶ。使い方はUberのバイク版のようなものである。
現在、GOJEKはインドネシアで約40万台のバイクでサービスを展開しており、ここ2~3年、ジャカルタでは頻繁に緑色のジャンパー、ヘルメットを着用したGOJEKのバイクを見かけるようになった。
インドネシアでは急速にスマホが普及しており、ジャカルタのような大都市では多くの人がスマホを利用している。GOJEKのアプリは使いやすく、ドライバーと電話やSMS(ショートメッセージ)での連絡もできる。
昔からジャカルタでは移動手段としてバイクタクシーがよく使われていたため、「OJEK乗り場」のような「バイクの溜まり場」が道路沿いにあった。昔はそこでバイクの運転手に行き先を告げて乗るものだったが、今はそのような「OJEK乗り場」でバイクの運転手と行き先や値段の交渉をして乗る人はほとんどいない。スマホで近くのバイクを呼び出して、来てもらうためである。料金も明瞭なので運転手との交渉も不要だ。
バイクの運転手も常にスマホを持って、客からの呼び出しが来ないかチェックしている。以前のOJEKよりもかなり効率的になった。インドネシアではAndroid端末がほとんどであるがスマホがかなり普及しており、ジャカルタのような都会では学生から大人までほぼ全ての人がスマホを所有している。バイクタクシーOJEKに昔から慣れ親しんでいるのであっという間に広がっていった。
OJEKの運転手をしていた人たちがそのままGOJEKやGRABで運転手をやっていることが多いが、サービスもかなりよくなった。例えば、
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