吉川忠行(よしかわ・ただゆき) 航空経済紙「Aviation Wire」編集長
1972年東京生まれ。音楽制作ソフトの輸入代理店に勤務後、2004年ライブドア(現LINE)入社。同業初の独自取材部門「ニュースセンター」立ち上げに参画し、経済・政治・社会分野を取材。2007年に退職後は仏AFP通信社等で取材を続け、2012年に航空経済紙「Aviation Wire」創刊。タイの航空当局が抱える安全性問題などをスクープ。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ビジネスジェット大国の米国に根を下ろして開発推進
本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が開発した小型ビジネスジェット機「HondaJet」(ホンダジェット)が好調だ。業界団体「全米航空機製造者協会」の発表によると、2017年通期で43機を引き渡し、小型ジェット機カテゴリーで最多納入を記録した。
3月28日には、全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD)が、HACIとビジネスジェット市場の拡大に向けた戦略的パートナーシップに関する基本合意書を締結。ANAの国際線で欧米へ向かい、渡航先からホンダジェットによるチャーター便を手配する。
ANAHDは、航空機調達で長年取引がある双日と、共同で新会社「ANAビジネスジェット」を今夏に設立すると、同時に発表。ビジネスジェットを活用した、チャーター手配事業に参入する。
ホンダジェットは、標準仕様で乗客5人が乗れ、パイロット1人でも運航できる。エンジンは米GEとの合弁会社GEホンダ製HF120を搭載し、航続距離は2265キロ(1223海里)。ロサンゼルスを起点とした場合、サンフランシスコやラスベガス、デンバーなどへ飛行でき、ロンドンからはパリやフランクフルト、ローマ、バルセロナなどへ飛べる。
主翼上に配された低騒音エンジンや複合材を使った胴体、ゆったりとした客室、カラフルな外装などが特徴だ。特にエンジンを主翼上に置く配置はユニークなもので、ビジネスジェットで主流となっている、胴体後部にエンジンを配するレイアウトとは一線を画す。
ホンダジェットの生みの親であるHACIの藤野道格社長は、「ビジネスジェットの利用は欧米では一般的で、ビジネスツールになっている。ホンダジェットは時間効率だけではなく、快適性でも今までのサービスをはるかに超えるものを提供できると確信している」と自信を示す。
一方で、好調なホンダジェットと比較されることが多いのが、三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」だ。航空会社が地方路線で運航する100席弱の機体だ。一方のホンダジェットは、個人や法人が飛ばす用途が主で、市場が大きく異なる。
開発が難航するMRJに対し、ホンダジェットがセスナ社など老舗を押さえ、年間販売機数のトップに躍り出た理由はいくつかある。中でも、ビジネスジェット大国である米国に、開発当初から根を下ろしてプロジェクトを進めたことは大きい。
民間航空機の場合、機体を製造した国の航空当局が安全性を審査する「型式証明」の取得が不可欠。米国であれば、新規参入が難しい航空業界に対して、知見を有する人材を獲得しやすい。そして、米国当局に安全性を認めてもらえない限り、機体を販売できない規定がある以上、米国子会社の設立は理にかなったものだった。そして、市場のニーズを取り込んだり、販売体制を築くにも、顧客との距離の近さは重要だ。性能が良くても、売れない機体では意味がない。
一方のMRJは2016年から、従来はアドバイザーにとどまっていた外国人技術者が要職につく体制に改めた。経験豊富な技術者の登用に、国籍は関係ない。
そして、ホンダジェットが今後も成長していく可能性を秘めているのは、エンジンも自社中心で開発したことだ。その理由を、藤野社長は