安倍政権下、日本の防衛費が米国に流れていく
2018年04月15日
米国の軍需産業の株価が、トランプ大統領就任直後から高水準を維持している。トランプ政権は国務省をバッシングする一方、強硬派の人物を相次いで重要ポストに起用。14日にはシリア攻撃に踏み切るなど、外交政策は軍主導色を強めている。その裏では、日本から米兵器メーカーに流れる防衛費が急増。東アジアの緊張が高まるほど米国が潤う構図が生まれている。
米国の2019会計年度(18年10月~19年9月)の国防予算は7160億ドルで、2年連続2ケタの伸びとなった。国防費の増加は軍需産業の業績を改善させ、新兵器の研究開発を促す。万一、戦争が起きれば兵器・弾薬などの備蓄が大量消費され、膨大な買い替え需要が発生する。
「偉大な米国の復活」を掲げ、軍事対立や経済戦争をいとわないトランプ大統領。その際立つ姿勢は、軍需産業への投資にまたとないチャンスをもたらした。
ボーイングは世界最大の航空機メーカーだが、売上高の40%が軍需部門で、戦闘攻撃機、大型輸送ヘリ、オスプレイなどを生産する。ロッキード・マーチンはステルス戦闘機、無人機など。レイセオンはミサイル、電子戦システムなど。ゼネラル・ダイナミクスは原子力潜水艦、戦車、機関砲など。ノースロップ・グラマンはステルス戦略爆撃機、早期警戒機、航空母艦などを生産する。
各メーカーは国防総省の差配の下にそれぞれが得意分野を持っている。その密接な関係は議会も巻き込んで「軍産複合体」と呼ばれ、第二次大戦直後から米国の政治経済・安全保障政策の決定に重要な影響を与えている。
また国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)は、32億ドルの年間予算を使ってITやロボットを研究する大学や企業などに豊富な資金を提供し、ネットワークを作り上げている。
北朝鮮や中東の危機は、軍需産業にとって好機到来だ。例えば日本は緊張が高まるほど防衛力強化に走り、高額の米国製兵器を購入するお得意さんになる。19年度以降に2基導入する地上配備型の迎撃ミサイル「イージス・アショア」(ロッキード・マーチン製)は1基1000億円する。
日本はこれらの装備品をFMS(対外有償軍事援助)と呼ばれる取引契約によって、米政府を窓口にして購入する。価格は交渉ではなく米政府が一方的に決め、日本政府は代金を前払いする。軍事機密の流出防止のための措置とはいえ、米国が全ての主導権を握り、日本側には不利な取引契約である。
FMSは、13年度以前は年間数百億~1千億円ほどだったが、14年度は2千億円、15、16年度は4千億~5千億円に急増している。第二次安倍政権が登場し、日米防衛協力が密になった時期に重なり、日本の防衛予算の約1割を米メーカーがさらって行く計算だ。日米首脳会談はトランプ大統領による売り込みの場でもある。
イラク戦争(03年開始)の際、米軍は兵器・弾薬の在庫を使い果たし、新品で補充した。しかし、その後、大規模な戦争はなく在庫は溜まったまま。新兵器を戦場で実際に試す機会も減っている。
老朽化した兵器は敵に対する劣勢や事故の原因になる。実際、日本では16年以降、米軍機の事故が多発している。AH-1Z攻撃ヘリは3回、UH-1Y輸送ヘリは2回、V-22オスプレイも3回起こしている。それぞれ初飛行から18年、17年、29年が経つ。
米国でも最近、ヘリや攻撃機の事故多発が問題視されており、装備更新や在庫一掃への期待が高まる背景の一つになっている。
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