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勢いづく米兵器メーカー、株価高騰

安倍政権下、日本の防衛費が米国に流れていく

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

拡大ロッキード・マーチン社が生産した戦闘機F16ファイティングファルコン=同社HPより

 米国の軍需産業の株価が、トランプ大統領就任直後から高水準を維持している。トランプ政権は国務省をバッシングする一方、強硬派の人物を相次いで重要ポストに起用。14日にはシリア攻撃に踏み切るなど、外交政策は軍主導色を強めている。その裏では、日本から米兵器メーカーに流れる防衛費が急増。東アジアの緊張が高まるほど米国が潤う構図が生まれている。

米国防予算は2年連続で2ケタの伸び

 米国の2019会計年度(18年10月~19年9月)の国防予算は7160億ドルで、2年連続2ケタの伸びとなった。国防費の増加は軍需産業の業績を改善させ、新兵器の研究開発を促す。万一、戦争が起きれば兵器・弾薬などの備蓄が大量消費され、膨大な買い替え需要が発生する。

 「偉大な米国の復活」を掲げ、軍事対立や経済戦争をいとわないトランプ大統領。その際立つ姿勢は、軍需産業への投資にまたとないチャンスをもたらした。

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 上の表は、NYダウと主要兵器メーカーの株価について、トランプ大統領当選直前の16年10月と今年4月を比較した上昇率を示している。ボーイングが157%と群を抜き、ロッキード・マーチンやゼネラル・ダイナミクスなど大手メーカーは40~60%と、いずれもNYダウの34%を大きく上回っている。

 ボーイングは世界最大の航空機メーカーだが、売上高の40%が軍需部門で、戦闘攻撃機、大型輸送ヘリ、オスプレイなどを生産する。ロッキード・マーチンはステルス戦闘機、無人機など。レイセオンはミサイル、電子戦システムなど。ゼネラル・ダイナミクスは原子力潜水艦、戦車、機関砲など。ノースロップ・グラマンはステルス戦略爆撃機、早期警戒機、航空母艦などを生産する。

 各メーカーは国防総省の差配の下にそれぞれが得意分野を持っている。その密接な関係は議会も巻き込んで「軍産複合体」と呼ばれ、第二次大戦直後から米国の政治経済・安全保障政策の決定に重要な影響を与えている。

 また国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)は、32億ドルの年間予算を使ってITやロボットを研究する大学や企業などに豊富な資金を提供し、ネットワークを作り上げている。

安倍政権で兵器購入が急増

 北朝鮮や中東の危機は、軍需産業にとって好機到来だ。例えば日本は緊張が高まるほど防衛力強化に走り、高額の米国製兵器を購入するお得意さんになる。19年度以降に2基導入する地上配備型の迎撃ミサイル「イージス・アショア」(ロッキード・マーチン製)は1基1000億円する。

 日本はこれらの装備品をFMS(対外有償軍事援助)と呼ばれる取引契約によって、米政府を窓口にして購入する。価格は交渉ではなく米政府が一方的に決め、日本政府は代金を前払いする。軍事機密の流出防止のための措置とはいえ、米国が全ての主導権を握り、日本側には不利な取引契約である。

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 従来、米国製兵器の調達は日本企業がライセンス料を払って生産する方式が中心だった。日本側は主に組み立てを担い、国産部品を使えるなどの利点があったが、FMSはライセンス方式を原則認めないので、日本企業にはメリットがない。

 FMSは、13年度以前は年間数百億~1千億円ほどだったが、14年度は2千億円、15、16年度は4千億~5千億円に急増している。第二次安倍政権が登場し、日米防衛協力が密になった時期に重なり、日本の防衛予算の約1割を米メーカーがさらって行く計算だ。日米首脳会談はトランプ大統領による売り込みの場でもある。

戦争が起きれば在庫一掃

 イラク戦争(03年開始)の際、米軍は兵器・弾薬の在庫を使い果たし、新品で補充した。しかし、その後、大規模な戦争はなく在庫は溜まったまま。新兵器を戦場で実際に試す機会も減っている。

 老朽化した兵器は敵に対する劣勢や事故の原因になる。実際、日本では16年以降、米軍機の事故が多発している。AH-1Z攻撃ヘリは3回、UH-1Y輸送ヘリは2回、V-22オスプレイも3回起こしている。それぞれ初飛行から18年、17年、29年が経つ。

 米国でも最近、ヘリや攻撃機の事故多発が問題視されており、装備更新や在庫一掃への期待が高まる背景の一つになっている。

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 トランプ政権誕生以来、金価格もずっと上昇し高値を維持している。米連邦準備理事会(FRB)は今年も3回の利上げ予定を公表している。利上げは、利息が付かない金にとって本来逆風で、価格が下がってもおかしくないのに、現実は上昇している。 ・・・ログインして読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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