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まだまだ続く?トランプ相場

2018年末から2019年にかけて1ドル100円を切り、90円台に

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

順調に景気回復するアメリカ

トランプ米大統領=4月24日、ホワイトハウストランプ米大統領=4月24日、ホワイトハウス

 「アメリカ・ファースト」を掲げるドナルド・トランプ大統領は積極的な公共事業の展開や減税等でアメリカ経済の活性化を図っている。アメリカ経済は順調に景気回復を果たし、IMFの世界経済見通し(WEO・2018年4月)によると2017年は2.3%、2018年は2.9%の成長を達成するとされている。

 2018年のユーロ圏の成長率は2.2%、日本のそれは1.2%と予測されているので、先進国の中ではアメリカが最も高い成長をするとの予測なのだ。

 ダウ平均も上昇を続け、2018年1月末には2万6149USドルに達した。(2016年の終値は1万9763USドル、2017年の終値は2万4719USドル)2018年2月から4月は下落に転じているが、それでも2万4000ドルは上回っている。

 為替については、国内雇用と輸出の重視からドル安政策を指向しているといわれている。2015年に1ドル121.04円だった円ドルレートは、その後ドル安・円高に推移し、2016年には1ドル108.79円、2017年には1ドル112.17円、2018年1月には1ドル110.77円となってきている。(いずれも年間・月間の平均レート)2018年4月には1ドル110円を下回り、2018年末から2019年にかけては1ドル100円をうかがう状況になってくるのだろう。

 1ドル100~110円というレートは日本にとって大きな問題になるレートではない。1ドル90円台、80円台となると話は別だが、当面、為替介入をする必要はないし、又、介入はアメリカが許容しないであろう。

為替介入は無理にやっても効果なし

 1995年、筆者が財務省の国際金融局長だった時、1ドル80円を切り、強烈な為替介入を行った。当時はアメリカも急激なドル安に懸念し、日本の介入を歓迎し、時として協調介入も実施した。しかし、現在の状況はこれとは大きく異なる。

 アメリカは1ドル100~110円のレンジで満足しており、前述したように、日本の為替介入は許容しないであろう。もちろん、アメリカが許容しなくても、日本の単独介入は可能だが、アメリカが反対だということがマーケットに伝われば、介入の効果は大きく減殺されることになる。介入は無理にやっても、効果が期待できない。

 とすれば、円ドルレートはさらに円高に推移し、年末から2019年にかけて1ドル100円を切っても不思議ではない。

円安・株高から円高・株安の局面に

 円ドルレートは2012年には1ドル79.79円だったが、2013年3月に黒田東彦氏の日本銀行総裁の就任と「異次元金融緩和」によって円安に推移し、2015年には1ドル121.04円まで円は下落した(レートはいずれも年間平均レート)。その後、トランプ大統領のドル安政策などを受け、次第にドル安・円高に向かった。

 2018年になると、1月に1ドル110.77円、2月に1ドル107.90円と、110円を切ってきた。トランプ大統領のドル安政策だけではなく、日本銀行もそろそろ金融緩和の出口をさぐっているのではないかという思惑も働き、円高が進んできているのだ。

 2016年以来上昇を続けてきた株価も、2018年に入って頭を打ち、緩やかな下落に転じてきている。ニューヨーク・ダウも2018年1月にピークを打ち(2018年1月の終値2万6149USドルだった)、3月には2万4000USドルまで下ってきている。一方、日経平均も2018年1月にピークを打ち(2018年1月の終値2万3098円)、4月には2万2000円台に入っている。

 円安・株高の局面から、いよいよ円高・株安の局面に入ってきたといえる。

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