急速な技術の進歩に対応し、迅速に法制度の見直しを
2018年05月12日
自動運転車の実用化には、まだ解決しなければならない問題が山積している。その一つが、自動運転のルールづくりである。
目下の焦点は、「レベル3」の実用化に関わる法的整備だ。
独フォルクスワーゲングループのアウディは昨年7月、世界に先駆けて、「レベル3」の技術を実装予定の新型セダン「A8」を発表した。世界中の自動車メーカーに衝撃が走った。
現行の国際条約や日本の道路交通法(道交法)では、クルマの操作は運転者が行わなければならないと、運転者主権が貫かれている。したがって、現行の法体系下では、「レベル2」までしか認められていない。
ところが、ドイツは違う。昨年6月、ドイツ議会は、運転者がハンドルから手を放し、運転することを認める道交法改正法案を可決した。すなわち、ドイツは、世界で唯一、「レベル3」の自動運転を認めているのだ。国策として、自動運転を後押ししていると考えていい。
しかしながら、ドイツの道交法は「レベル3」に対応しているものの、アウディはまだ、「レベル3」の自動運転車を走らせることができない。なぜならば、法的対応はまだ、完全ではないからだ。
自動運転をめぐっては現在、国連欧州経済委員会「WP1(道路交通安全作業部会)」の政府間会合「WP29(自動車基準調和世界フォーラム)」で、自動車の安全・環境基準に関する共通の基準づくりが進められている。
「WP29」内の「自動操舵専門家会議」では、公道での自動操舵の国際基準が議論されているが、現在のルールでは、時速10キロメートル以下でしか自動運転が認められていないのだ。この規制が改正されない限り、公道で「レベル3」の自動運転車を走らせることはできない。
つまり、世界で唯一、「レベル3」を実用化するために道交法を改正したドイツにしても、公道での自動操舵の国際基準が緩和されないことには、「レベル3」の公道走行は不可能なのだ。
では、日本はどうか。クルマの運転に関して、日本では警察庁の所管する道交法によって基本が定められている。無人運転は想定されていないばかりか、「レベル3」の自動運転も認められていない。
したがって、日本の自動車メーカーは、技術的には実用水準に達しているにもかかわらず、これまで、「レベル3」を謳うことにおしなべて慎重にならざるをえなかった。しかし、それを理由に、自動運転に躊躇すれば、欧米の自動車メーカーの後塵を拝することになる。
トヨタは、2020年をメドに、高速道路で合流、分岐、追い越しなどを自動で行う「レベル3」の「ハイウェイ・チームメイト」の導入を予定している。さらに、2020年代前半には、一般道にも対応する「レベル4」の「アーバン・チームメイト」の商品化を計画している。
日産は、18年度中に高速道路の複数車線、すなわち車線変更を自動で行う自動運転技術の導入を計画している。実質的な「レベル3」である。さらに、20年には市街地、すなわち一般道の交差点を含めた自動運転機能を市場投入する方針だ。
ホンダは、20年を目標に、高速道路で「レベル3」に相当する自動運転技術を実用化し、25年をメドに、パーソナルカー向け「レベル4」の技術確立を目ざすと発表している。
自動運転に関するルール整備は、もはや待ったなしの課題といっていい。
「自動運転に関しては、環境整備、法的整備が不可欠です。政府主導の成長戦略の一環として、近々、自動運転にかかわる整備大綱が作成されます。多くの省庁にまたがっていましたが、一元的な取り組みとして、政府に主導していただけると伺っています。これは、我々、自動車業界としても大変期待をしております。自工会としても、積極的に参加していきたいと考えています」
と、日本自動車工業会会長の西川廣人氏は、3月15日に開かれた自工会の定例会見の席上、語った。
日本政府は、東京五輪が開かれる2020年をメドに、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください