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AIの軍事研究に世界中の研究者がNO!

韓国の大学の産学連携めぐる動き、キラーロボットの時代に懸念

佐藤仁 学術研究員/ジャーナリスト

韓国の国立大学KAIST、産学連携でAIを活用した軍事研究

 韓国の国立大学KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)と韓国の防衛関連大手企業のハンファシステムが2018年2月に、人工知能(AI)を活用した自律兵器の開発など軍事研究を共同で推進していくこと発表した。

 両者はKAISTのキャンパス内に、AIを活用した防衛に関する研究センター(Research Center for the Convergence of National Defense and Artificial Intelligence)を設立した。いわゆる産学連携によるAIを活用した軍事研究だ。KAISTからは25人の研究者が参加し、AIベースのコマンドシステム、AIを搭載した無人ナビゲーションのアルゴリズム開発、AIによる飛行システム、物体追跡に関する研究や開発を実施する予定だった。

 設立時に、KAISTのSung-Chul Shin学長は「KAISTにはAI分野の専門家が60人おり、グローバルレベルでの研究ができる。今回の研究センター設立は、国家防衛でのAI活用の強力な礎になる」とコメント。また「KAISTと協力して、2018年中に開発を完了したい。そしてグローバル市場でも競争力ある製品を開発していきたい」とハンファシステムCEOのChang Si-kweon氏は述べていた。

世界中の研究者、「KAISTが開発をやめるまでは絶交」宣言

AI開発のルール作りに関して話し合った国際シンポジウム=東京都文京区本郷の東京大
 そして、韓国の大学KAISTが産学連携でAIを活用した軍事研究を行うことに対して、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学Toby Walsh教授が中心となり、約30カ国のAIやロボット研究者、エンジニア約60人が、KAISTに対して「AIの軍事活用はキラーロボットの発展につながることから遺憾である」とのコメントを表明。2018年3月にオープンレターをKAISTのSung-Chul Shin学長に対して出した。

 オープンレターの中で「KAISTがAIを活用した軍事研究や開発をやめない限り、KAISTとの協力関係を一切取りやめる」と公に宣言。例えば、「KAISTを訪問しない、KAISTの関係者を招へいしない、KAISTが関与しているあらゆる研究プロジェクトに関わらない」と述べ、キラーロボットに発展する懸念があるAIの軍事活用に向けた研究が中止されるまでは、絶交するとの絶縁状を突き付けたのである。

KAIST学長「ロボット兵器の開発はしない」と確約

 オープンレターを受けてKAISTのSung-Chul Shin学長は「大学では自律型兵器の開発は一切行っていない。我々は人権と倫理観を重視した研究開発を行っている。人間の判断が入らず、ロボットが自律的に攻撃するような自律型兵器の開発は行っていない」とコメントした。

 そして2018年4月に、改めてKAISTのSung-Chul Shin学長は「大学としてキラーロボット、自律型兵器を開発する意思は全くない」ことを明らかにし、「人間の尊厳や人権を無視するような研究や開発は一切行わない」ことも確約した。KAISTとの関係をボイコットしていた研究者たちも、KAISTの発表を受け、KAISTとの関係を以前のように戻すことを明らかにしている。

AI搭載兵器の登場で変わる戦場と戦争

 AIの軍事面での活用を模索した取り組みは韓国だけではなく、ロシアや米国などでも進められている。実際に戦場に投入されるようになれば、

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