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中国市場に日本企業はどう向き合うべきか(下)

無視はできないが、リスクや障害だらけ。それでも魅力を感じたときの選択肢は?

武田淳 伊藤忠経済研究所チーフエコノミスト

競争が激し過ぎ、利益が確保できない……

中国の鍾山商務相(手前)に商習慣などビジネス環境の改善を申し入れる日中経済協会の宗岡正二会長(中央)ら日本の訪中団=2017年11月21日、北京市拡大中国の鍾山商務相(手前)に商習慣などビジネス環境の改善を申し入れる日中経済協会の宗岡正二会長(中央)ら日本の訪中団=2017年11月21日、北京市

 中国市場が多くの日本企業にとって有望であり、無視できない市場であることに異論はないと思う(「中国市場に日本企業はどう向き合うか(上)」)。

 だが、その一方で、実際にビジネスを進めようとすると、障害や不透明さが多いのもまた、中国市場の現実である。

 まず、魅力的な市場であるが故に競争が非常に激しい。

 たとえば、自動車市場。リーマン・ショック直後に米国を追い越し世界最大となり、2017年には米国の年間約1800万台を大きく上回る2900万台にまで成長した。この世界最大の市場に対して、生産能力は外資系と国内メーカーを合わせて4000万台にも上っている。

 そのほかにも、家電製品や建設機械、産業機械、小売、外食に至るまで、多くの分野で日本のみならず欧米の名だたるグローバル企業が参入、しのぎを削っている。そのため、販売量が伸びても、利益を十分に確保できるとは限らない恨みがある。

地場企業が競合相手になる公算大

 また、地場企業の成長スピードが速く、いずれ競合相手となり得る分野が多いことも、他の新興国ではあまり見られない中国市場の特徴である。背景の一つに、中国独特の国有企業を中心とする経済システムがある。

 共産党一党独裁という、ある意味効率的な社会システムのもと、資金や人材を国有企業に集中できるため、その成長の基盤は盤石である。実際、米国「フォーチュン」誌の世界企業ランキング「フォーチュン・グローバル500」2017年版では、売上規模上位500社のうち中国本土企業が105社(うち国有企業は81社)もランキングされ、日本企業の51社を大きく上回っている。

 上位にいる中国企業の顔ぶれを見ると、国有企業では石油や天然ガスなどのエネルギー分野や四大国有銀行(中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行)、通信、自動車などの業種が占めている。

 民間企業では通信機器メーカーのファーウェイ(華為)やパソコンメーカーのレノボ(聯想集団)、ECサイトの京東(JD.com)、家電メーカーの美的集団、総合インターネットビジネスのアリババ(阿里巴巴集団)やテンセント(騰訊)、家電量販店の蘇寧雲商集団といった企業がランキングされている。

 中国ではこのところ、規模のうえで世界的レベルにまで成長する民間企業が増えている。日本企業が中国市場でビジネスを展開する上では、こうした成長の著しい地場企業の動向にも目配せが必要な状況になっているのである。

高い技術流出のリスク

 さらに、競合する地場企業の競争力を高めることになる技術流出のリスクも、中国市場では強く意識すべきところであろう。

 かつては日本企業も先行する欧米企業の技術を研究し、競争力を高めていったのも事実だが、中国では、一部の業種で外資に対する出資規制が残るほか、調達ルートの確保や政府との関係構築の重要性、市場開拓の容易さなどの観点から、外資企業が合弁による進出を選択せざるを得ないケースが多い。その分、合弁相手に技術やノウハウが流出しやすい。

 くわえて、アメリカ政府が中国の進める製造業強化策「中国製造2025」を意識して明確に指摘するように、中国政府から市場参入の条件として技術移転を要求される可能性も想定しておくべきであろう。

共産党の企業管理強化にも注意

 技術流出リスクを高めるという意味からも注意したいのが、中国共産党による企業の管理強化の動きである。

 昨年10月の党大会前後から、中国共産党は、企業内に党組織を設置することを定款に盛り込むよう要求するなど、指導という名のもとに企業への関与を強めようとしている。現時点では日系企業への影響は聞こえてきていないが、中国民間企業の中には、こうした共産党の動きに対して、あえて従順さを明示するところもある。ましてや外資系企業が中国でビジネスを展開する際には、共産党ひいては中国政府への配慮が欠かせないことを肝に銘じておくべきであろう。

中国ビジネスへの選択肢

 以上のような中国市場の魅力や留意点を踏まえると、日本企業が中国ビジネスに対してとりえる選択肢は、以下のように整理できるのではないだろうか。 ・・・続きを読む
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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠経済研究所チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、調査情報部、伊藤忠経済研究所で主任研究員をつとめる。