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⑤「日本と世界」に注視する作家、堺屋太一さん

日本の財政はなんとかなる。より深刻なのは少子化だ

古屋聡一  朝日新聞経済部記者

拡大組閣の夜、新閣僚が黒塗りのハイヤーで乗り付けるなかで、小渕新内閣の目玉として経企庁長官に抜擢された堺屋太一さんはタクシーで首相官邸を訪れた=1998年7月30日
 

通産官僚、作家、そして経企庁長官へ

 米国の社会学者エズラ・ヴォーゲル氏の著作「ジャパン・アズ・ナンバーワン」がベストセラーになったのは、今から約40年前のことだ。製造業を軸にした日本の経済成長は世界の注目を浴びていた。

 しかし、バブル景気が崩壊すると、日本は「失われた20年」と呼ばれる時代に突入した。異例の早さで少子高齢化が進み、東京と地域の格差が問題視された。「課題先進国」と呼ばれるようになり、財政赤字も膨らんでいった。

 IT革命以降は、アイデアが重視される時代がやってきたが、日本にはグーグル、アップル、アマゾンのような水準で、世界の産業構造や市場にインパクトを与えるグローバル企業は存在していない。

 日本の課題とは何か。これからどのような針路をとるべきなのか。

 通産官僚出身で作家の堺屋太一さんは「日本と世界」を注視してきた論客だ。小渕内閣では民間人として経済企画庁長官を務めた。

 「平成の財政」を語るシリーズでこれまで登場いただいた方々とは財政に対する姿勢に温度差がある。「財政よりも重要なものがある」という主張に耳を傾けてみたい。

拡大堺屋太一さん。通産省在職中に作家デビュー。1998年から2000年まで経済企画庁長官。近著「団塊の後 三度目の日本」など著書=2018年3月28日

心配なのは「財政」より「安定志向」

 財務省はさかんに財政再建の必要性を訴えています。もちろん再建はした方がいいが、それほど緊急の話ではないと思います。

 日本の財政は「何とかなる」と考えています。財政は赤字が積み上がったからといってつぶれるものではない。信用を失って初めてつぶれます。

 経済情勢は安定して、わずかですが、経済成長もしています。こうした状態が続く限り、日銀による国債買い入れでしのげると思います。

 国民が日本円での貯金を続けているのは「円」という通貨を信用しているからです。国内には個人金融資産が1800兆円あるとされます。急激にドルに交換されたり、海外の不動産に投資されたり、という現象は起きていません。

 大地震などの災害、リーマンショック級の経済危機、石油の輸入が止まるような緊急事態が起きた場合、財政出動して危機に対応する弾力性がだんだんと失われているという側面はあると思います。ただ、こうした大きな変動が起きない限り、私は大丈夫だと考えています。

 財政赤字よりも深刻なのは少子化です。労働力減少を背景に人手不足に陥り、耕作放棄地や空き家などの余った土地の増加が問題になっています。土地を自治体に無償で寄付をしようとしても、利用価値が低い物件は、受け取ってくれません。固定資産税の減収などを恐れているのでしょう。

 東京への一極集中はますます進み、地域格差が広がっています。このため、地方の財政が非常に悪くなることを懸念しています。

 問題の解決には、人口を増やさなければいけません。 ・・・ログインして読む
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筆者

古屋聡一

古屋聡一 (ふるや・そういち) 朝日新聞経済部記者

1994年朝日新聞社入社。デジタル編集部、オピニオン編集部などを経て、経済部記者。左遷をめぐるビジネスパーソンの様々な人生模様を追った連載企画「左遷をたどって」など、組織における個人の生き方について考えるテーマを中心に取材活動をしている。

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