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日本の木材は世界一安い!?

国産材の輸出は急増、販売価格は原価割れで山主の利益還元にはつながらず

田中 淳夫 森林ジャーナリスト

 平成29年度森林・林業白書が公表された。森林環境税の創設や新たな森林管理システムなど、最近の林政の動きを大きく取り上げている。だが私が興味を感じたのは、木材輸出対策に関する項目である。

安い丸太を中心に国産材の輸出が急増

拡大輸出用木材を船に積み込む=宮崎県・日向港
 ここ数年、国産材の輸出が急増している。白書の数字を引用すると、2017年の木材輸出額は前年比37%増の326億円。国・地域別でみると、中国が145億円、フィリピンが74億円、韓国が37億円、米国が19億円、台湾が16億円と続く。品目別では、丸太が137億円(前年比62%増)、製材が54億円(前年比43%増)、合板等が63億円(前年比28%増)。フィリピン向けは主に合板だが、そのほかは多くが丸太だ。丸太は輸出額全体の約4割を占め、99%が中国・韓国・台湾向けだ。

 では、これらの輸出された木材を量で見るとどれぐらいになるのか。そう思って統計を探したのだが、どこにも掲載されていない。日本の木材生産量に占める輸出割合を知ろうと思ったのだが、わからないではないか。それに木材量がわからないと、丸太や製材の単価も概算できない。これは不思議だ。日本が輸入する木材に関しては品目別や国・地域別に木材量でしっかり示されているのに。(たとえば丸太輸入量は約365万立方メートル、製材997万立方メートルなど)

 だが、ある程度読み取れる。まず丸太は加工品よりかさ張り、安価なのは間違いないから、金額で約4割なら量的には過半を大きく超えるだろう。白書にも「丸太中心の輸出」という言葉がある。

また木材用途を見ると、全体の約45%を占める中国向けは、主にスギ丸太から梱包材、土木用材、コンクリート型枠などになるという。いずれも品質をあまり問わない用途だ。おそらく使われるのは、日本でB材C材と呼ばれる価格の安い丸太だろう。

 米国向けは、住宅フェンス等に使われてきたベイスギの価格が高騰したため代替にスギが使われるようになったとある。ただ、これも中国で加工されたものが多いというから輸出されているのは丸太か。韓国向けは内装材にするヒノキが多いようだが、輸出の6割は丸太で行っている。製材加工は韓国で行っているのだろう。

 どうやら木材輸出で伸びているのは、安さが売り物の丸太が中心と思われる。それを裏付けるように、中国を訪れた日本の林業関係者は、中国のバイヤーに「日本の木材の魅力は、何といっても価格」と言われたそうだ。安いから買うのであって、品質を求めているのではないのだという。そして「日本の木材は世界一安い」そうである。

 逆に台湾の林業関係者からは「日本の木材が安すぎるから、台湾の木材が売れない」という不満の声が上がっていると聞いた。

 しかし単価が安いということは、売れても利益が薄いということだ。山元への還元はあまり期待できない。そもそも急増したとはいえ輸出額が326億円程度というのは、売上としては決して大きくない。日本の林業を底上げする力はないだろう。

国内で売れるのも安い木材ばかり

 実は輸出する木材だけではない。国内でも売れるのは安い木材ばかりである。需要で言えば、比較的高値のつく住宅建材向きのA材は減少する一方で、合板やボード類、チップ用の木材(B材、C材)が増えている。さらにバイオマス発電燃料(D材)が引っ張りだこだ。そのため、本来はA材になる品質の木材も合板用に安く売るケースも増えている。またD材を仕分けるのではなく、伐採した木を全部一括してバイオマス燃料として出荷することもあるという。林業家からすれば、長年育ててきた資源を伐り出して販売しても儲からなくなったことを意味している。

 しかし「日本の木材は安い」と聞いて、怪訝な思いを持つ人も多いだろう。なぜなら家を建てようとしても「国産材を使うと高くなる」と信じられているからだ。また「安い外材に負けて、日本の林業は衰退した」と今も思っている人が少なくない。日本の木材は「質がよくて高い」というイメージが浸透している。

 残念ながら原木、つまり山で伐った丸太状態の国産材は、極めて安いのである。ここ30年ずっと下がり続けている。たとえばスギの立木の価格は、1994年が3720円だったのが2016年は840円と5分の1に暴落しているのだ。一方で商品(製材品など)価格も下落傾向が続いていたが、近年は徐々にもどってきた。(1本の立木から生産される)スギ製材品価格は94年で8480円だったのが16年は7830円である。その結果、山主が受け取れる額は、かつて製品価格の40%以上あったのが、今や10%程度になってしまった。製品価格の利益は、山主に行かずどこへ消えたのか。

 ようするに ・・・続きを読む
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筆者

田中 淳夫

田中 淳夫(たなか・あつお) 森林ジャーナリスト

1959年大阪生まれ。静岡大学農学部卒。日本唯一の森林ジャーナリストとして森林と人間の関わりをテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『森林異変』『森と日本人の1500年』(ともに平凡社新書)のほか、『日本人が知っておきたい森林の新常識』(洋泉社)、『樹木葬という選択』(築地書館)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。

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